翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション3

日ごとの心得 - 翻刻

日ごとの心得 - ページ 16

ページ: 16

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【右丁】 人をも救(すく)ひおのれも用ふべし格別(かくべつ)荒仕事(あらしごと)をせぬ人は昼(ひる)めしのかはり に此丸薬を二粒ほど用ひて見べし半日位のうゑをしのぐことは 心安きこと也常に旅行する人などは未明に一粒用ひていづる時は朝 めしを食せずともしばらくは腹へらぬことうたがひなし然れ共 これは畢竟(ひつきやう)飢饉(ききん)のせつの非常(ひじやう)の手当(てあて)なれば五穀(ここく)豊作(ほうさく)にて万(ばん) 民(みん)ゆたかなる御代にわざ〳〵此方を製するにはおよばす今年(ことし)天保 四年七月上旬頃より米穀しだい〳〵にあがり此九月下旬には白米両 に四斗より四斗四升の價(あたひ)ときけり都下の諸人おほいに難渋に見 えければ 公(おほやけ)より御救ひ米をくだしおかれ窮民(きうみん)をすくはせ 給ふありがたさ申も中〳〵恐れありさればをのれが如きやからも 国恩(こくおん)を報ずるのひとつと心づきしゆゑ家伝の方を記して人の たすけとはなしぬ天明三年の飢饉(ききん)に此方を製(せい)しておほくの 【左丁】 人を救(すく)ひしよしおのれが祖母(そぼ)なるものゝ噺(はなし)にたび〳〵きけりおのれ 此方を試(こゝろ)みしは文化四年八月十九日永代橋おちて人おほく死(し)せし ときおのれがのがれがたきもの其日に深川八幡の祭禮(さいれい)見にゆきし ことゆゑいかゞあらんと案事わずらひければ懇意(こんい)の者三人たのみてうち つれ是をはかりに永代迄かけつけけるに橋は深川のかたへよりたる処お ちければ死骸(しがい)はこと〴〵く向の岸(きし)へあげてあるよしにて小網町のかた よりゆきてはかなはずよつて大橋へ廻りけるにおびたゝしき人なれば棒(ぼう) つきいでゝ橋をとほさず其内に渡し舟いでしがいとこみ合しこと ゆゑやむことをえず両国橋へまはり漸(やうやく)にして永代向へゆきて見るに おびたゝしき死骸(しがい)目(め)もあてられぬありさまなりひとり〳〵に見る に心あたりの者はなければ少しく安心して其処をいでけるがいかにせん おの〳〵空腹(くうふく)になりて歩行もたへがたけれど家をいづるときいと