翻刻!江戸の医療と養生

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日ごとの心得 - 翻刻

日ごとの心得 - ページ 18

ページ: 18

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【右丁】 の住居(すまゐ)なれどたゝみが切れても平気にて表(おもて)がへをなさんといふこゝろ もつかず只々くひさへすればよしと見えて茶の口とりにも煉羊(ねりよう) 羮を調へおき日には三四本づゝも食するよし一日用事ありておのれ が家に来たりしとき折節心ざしのことありて家内うちより牡丹餅(ぼたもち) をこしらへてゐけるゆゑ己(おのれ)さしづして菓子盆に四ッ五ッのせていだ させけるにちよつとみたばかりにてくはず噺(はなし)も用談(ようだん)の事にて思ひの 外手間どり夕かたにもなりける故 八盃(はちはい)豆腐に香(かう)のものをつけ出(いだ)し 幸ひ貰(もら)ひし鮑(あわび)のありけるゆゑそれをもそへて膳(ぜん)をすゑけるが飯は一膳(いちせん)のみ にて平も香(かう)の物も手をつけずして鮑(あわひ)のみくひしまへりかへりてのちお のれつく〴〵おもひけるはさて〳〵方外なるものゝくひやうかな此人 生涯(しやうがい) を全(まつた)ふすることおぼつかなしとこゝろのうちにおもひしがあんにた がはずそれより二年すぎて遂(つひ)に美(び)食のために身上をくひつぶ□【し】 【左丁】 家内もちり〴〵になり其身は裏店(うらだな)へはひりあはれなる暮しをして 居たりしが其冬より脚気種(かつけしゆ)を煩(わづら)ひ翌春(よくはる)二月の末に衝心(しよう )して空(むな)しく なりたりこれらは食毒のために命(いのち)を失(うしな)ひ美(び)食のために家をほろぼ せり頑につゝしむべきはおごりの所にて保元(はうげん)に春の花とさかへし平家も 寿永(じゆゑい)に秋の木(こ)の葉と散(ちり)りはつるも皆これおごるものは久しからざるた めしなればたとへいさゝかなる食物たりとも美食のために金銭をつひ やすことはよく〳〵たしなむべきことなりさて此丸薬 壱剤(いちざい)を製(せい)するには何程 も物のいらぬことなればこゝろざしある人は製しおきて人にもあたへて其効 のうをしめすべし壱剤にては粒数(りうすう)もよほど出来(でき)れは貯へおきて急用に 備ふること陰徳(いんとく)の所にして万民を救ふの一助ならずや     ○食を減じて腹へらぬこころえ この後にももし米穀(べいこく)高直(かふじき)にて飢饉(きゝん)なりし時あらば.あらしごとをせぬ 【虫損部は東京大学総合図書館蔵本を参照し注記】