翻刻
【右丁】
ほすべし用ふるときはざつとゆでゝつかふ汁の実.松もどき.煎染(にしめ).とうにして
よし上州辺にては年毎にかくする所あり[主治]瘀血(ふるち)を散(さん)じ痛を治
し腫を消し腸(てう)を寛(ゆるふ)す
甘藷(さつまいも) こぐち切にし日にほしてたくはふるときは幾年も虫つかずし
かれ共をり〳〵ほすにしくことなしほし芋は生(なま)より粘稠(ねんてう)【「ネバル」左ルビ】の気うすくし
て害(がい)なし[主治]気力を益(ま)し脾胃(ひゐ)を健(すこやか)にすしかれ共多く食すれば害あり
黄独(かしういも) これも上に同じくこぐち切にし日にほしたくはふべし用ふるとき
ゆでゝ粥(かゆ)にいれてよし[主治]諸の薬毒(やくどく)を解(げ)し熱嗽をさる
羊栖菜(ひじき) 一種(いつしゆ)長ひじきといふありたくはへおくにはやはり干物屋にある
常の鹿茸草(ひじき)のかたよしこれもをり〳〵日あたりに出して干すべしあら
めよりは質(しつ)腐敗(くされ)やすし[主治]食をすゝめ胃(ゐ)を健にす
挨辣迷(あらめ) 生(しやう)にてたくはへおき用ふべし干物屋にあるきざみ荒布(あらめ)は製
【左丁】
よろしからず[主治]婦人諸疾.及血症.水を利し.痰種を消す.
裙帯菜(わかめ) 加賀よりいづるを上品とすしかれ共 稀(まれ)也干物屋にびしやもん
和布(わかめ)と称するものをとゝのへたくはふべしひじきよりは又くされ早し度々
日にほし常に火辺におくべし[主治]婦人 赤白帯下(ながち).男子 遺精(いせい).虚弱なるによし
昆布(こぶ) 白こぶのかたよしこは大坂には多かれど江戸にはまれなれば矢張(やはり)葉(は)
昆布(こぶ)を貯ふべし松前よりいづるを上品とすえがたければやむことをえずき
ざみ昆布をとゝのへおくべし[主治]積聚を治し.水腫を消し.口中の
ふき出ものを治す
海藻(ほんだはら) 暮(くれ)の市より初春へかけて調へおくべし用ふるには三盃酢にて食
すべし風味よき物也夏日たび〳〵ほさゞれは虫いづる[主治] 癭瘤(こぶ)結核(けつかく)
を治す余が家の伝来に瘰癧(るいれき)を治するに奇方あり左に記す
海藻《割書:大|》 忍冬 荊芥 川芎 仙屈菜【「みそはぎ」左ルビ】《割書:各|中》 大黄 営実《割書:各|小》 甘艸《割書:少|》