← 前のページ
ページ 181 / 192
次のページ →
翻刻
あげて。伴(ばん)左衛門たとへ万里(ばんり)の外(ほか)に走(はし)るともたづね出(いだ)し。立合(たちあひ)の仇打(あだうち)を
おんゆるしあるやうにはからふべし。これ三郎左衛門どのゝ洪恩(こうおん)をせめて
和殿(わどの)にむくはん為(ため)なりといへば。山(さん)三郎大に安堵(あんど)の思ひをなして喜(よろこ)ぶ
事(こと)かぎりなし。時(とき)に猿(さる)二郎おつ〴〵嘉門(かもん)が前(まへ)にはひ出(いで)て申しけるは。さき
ほど途中(とちう)にてうけたまはれば。兄(あに)鹿蔵(しかぞう)人質(ひとじち)となりて。五条坂(ごじやうざか)に捕(とらは)
れをるよし。気(き)づかはしく候。いかゞはからひしかるべうやとうかゞへば。嘉門(かもん)その
儀(ぎ)はすこしも気(き)づかふへからずとて。懐中硯(くわいちうすゞり)を取出(とりいだ)して一通(いつつう)の証書(しやうしよ)
をかき。花押(かきはん)をすゑて猿(さる)二郎にあたへ。汝(なんぢ)此(この)一通(いつつう)をかの地(ち)の郡司(ぐんし)の
□に持(もち)ゆけよ。しかる時(とき)は復讐(ふくしう)にまぎれなきことあきらかならん
とい□に□猿(さる)二郎おしいたゞきてたゞちにかしこへいそぎゆく。嘉門(かもん)また
山(さん)三郎にむかひ。某(それがし)はからず一個(いつこ)の証人(しやうにん)を捕(とら)へて。佐々木(さゝき)の館(やかた)の䮴動(そうどう)
【挿絵】
山(さん)三郎 不破(ふは)
伴(ばん)左衛門を打(うち)て
父(ちゝ)の仇(あた)をむくふ
山三郎
伴左エ門