翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

昔話稲妻表紙 - 翻刻

昔話稲妻表紙 - ページ 182

ページ: 182

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の根本(こんほん)は。執権(しつけん)不破(ふは)道犬(だうけん)が逆心(ぎやくしん)より出(いで)て。継母(けいぼ)蛛手(くもで)の方(かた)に悪意(あくい)を薦(すゝめ) て。実子(じつし)花形丸(はながたまる)を家督(かとく)とし。のち〳〵は母子(ぼし)ともにうしなひて。おのれ家(いへ)を うばひとり。浜名(はまな)入道(にうだう)に味方(みかた)せんたくみなる事(こと)あきらけし。不日(ふじつ)に某(それがし)勝基公(かつもとこう) の名代(みやうだい)としてかの館(やかた)に立越(たちこへ)。道犬(だうけん)を糺明(きうめい)して悪意(あくい)をあらはし。ふたゝび桂(かつら) 之助どのを世(よ)に出(いだ)し申さばやと思ふなりと。心底(しんてい)のこらずかたりければ。 山(さん)三郎 三拝(さんはい)してぞ㐂(よろこ)びける。嘉門(かもん)已(すで)に立(たち)あがり。忍(しのび)の他行(たぎやう)なればひま とりがたし。かさねてゆる〳〵まみゆべしといひつゝ。門口(かどぐち)に出(いで)てしはぶきすれば。 はるかあなたにひかへたる供(とも)まはり。忍(しのび)乗物(のりもの)をかき来(きた)る。山(さん)三郎 門(かど)おくり して礼(れい)をおこなへば。嘉門(かもん)会釈(ゑしやく)して乗物(のりもの)に乗(のり)うつり。別(わかれ)を告(つげ)て出(いで)ゆきぬ。 かくて山(さん)三郎は嘉門(かもん)が教誨(けうゆ)によりてやう〳〵心(こゝろ)ひらけ。葛城(かつらき)が首(くび)をとり。 手水盤(てうづばち)の水(みづ)をくみとり。血(ち)しほをあらひ。なく〳〵首(くび)を仏壇(ぶつだん)にすゑて。 香(かう)をたき水(みづ)を手向(たむけ)。鉦(かね)打(うち)ならして。南無(なむ)幽霊(ゆうれい)頓証仏果(とんしやうぶつくわ)菩提(ぼだい) 南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)あみだ仏(ぶつ)と唱(となへ)て居(ゐ)たりけるに。思ひかけざる床(ゆか)の下(した) より。明(めい)晃々(くわう〳〵)たる剣(つるぎ)のきつさき危(あやう)く膝䯊(ひざがしら)を擦(かすり)てぞ閃(ひらめ)きいでぬ。 山(さん)三郎 仡(きつ)と見て。手(て)ばやく手向(たむけ)の水(みづ)をとりて剣(つるぎ)にそゝぎ。刀(かたな)をとり 身(み)をそばめてうかゞひ居(ゐ)たるに。床(ゆか)の下(した)には仕(し)すましたりとや思ひ けん。板敷(いたしき)をめり〳〵とおしやぶりて躍出(をどりいで)たるは何人(なにびと)ぞや。是(これ)則(すなはち)別(べつ) 人(じん)にあらず。不破(ふは)伴(ばん)左衛門 重勝(しげかつ)なり。伴(ばん)左衛門 声(こゑ)たかく。かくあらん と思ひしゆゑ。今朝(こんちやう)いまだ闇(くら)きを幸(さいは)ひ。汝(なんち)があとをつけ来(きた)りて 床(ゆか)の下(した)にかくれ。始終(しゞう)のことをくはしく聞(きゝ)ぬ。草履打(ざうりうち)の宿恨(しゆくこん)といひ 妹(いもと)のかたきかへり打(うち)なるぞ観念(くわんねん)せよといひつゝ。斬(きり)つくれば山(さん)三郎 刀(かたな)を抜(ぬき)て丁(ちやう)とうけとめおのれと来(きた)りて灯火(とうくわ)に飛入(とびいる)夏(なつ)の虫(むし)。これ