翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

昔話稲妻表紙 - 翻刻

昔話稲妻表紙 - ページ 183

ページ: 183

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天(てん)のたまものなりとよはゞりて十 余合(よがう)戦(たゝかひ)けるが。伴(ばん)左衛門 運命(うんめい)尽(つき) たる時(とき)にやあらん簀(す)の子(こ)に足(あし)をふみぬきて。よろめく所(ところ)を山(さん)三郎。はや 足(あし)を飛(とば)せて合破(がば)と踢(け)たふし。乗(のり)かゝりて刀(かたな)をとりなほし。首(くび)を弗(ふつ)と かき斬(きり)たるはこゝちよくぞ見えたりける。かゝる折(をり)しも猿(さる)二郎 廓(くるは)の 事(こと)をすまして。恙(つゝが)なく鹿蔵(しかぞう)をともなひて立(たち)かへり。此 体(てい)を見て両人(りやうにん) ともに天(てん)を拝(はい)し地(ち)を□(はい)して。㐂(よろこ)びなきに泣(なき)けるは。げにたのもしき ものどもなり   二十 積善(しやくぜん)の余慶(よけい) 扨(さて)も大和国(やまとのくに)佐々木(さゝき)の館(やかた)には。家督(かとく)さだめの事(こと)につき。官領(くわんれい)由理之助(ゆりのすけ)勝基(かつもと) 公(こう)の名代(みやうだい)として。梅津(うめづ)嘉門(かもん)景春(かげはる)今日(こんにち)着駕(ちやくが)のよし。さきだちて沙汰(さた)あり ければ。判官(はんぐわん)貞国(さだくに)みづから下知(げぢ)して広坐敷(ひろざしき)を掃除(さうぢ)させ。礼服(れいふく)を着(ちやく)し て相待(あひまち)けるに。ほとなく来駕(らいが)ときこえしかば。みづから玄関(げんくわん)に出(いで)て相(あひ)むかふ。 梅津(うめづ)嘉門(かもん)。金紋紗(きんもんしや)の道服(たうぶく)に。白精好(しろせいごう)の長袴(ながばかま)を曳(ひき)。海老鞘巻(ゑびざやまき)をおび。 中啓(ちうけい)の扇(あふぎ)を把(とり)。烕儀(いぎ)堂々(だう〳〵)として入来(いりきた)り。安内(あない)につきて広坐敷(ひろざしき)にうち とほり。設(まふけ)の席(せき)に居(ゐ)なほりければ。判官(はんぐわん)恭(うや〳〵)しく礼(れい)をおこなひ。長路(ちやうろ)の 所(ところ)御苦労(ごくろう)のいたりに候と相(あひ)のぶれば。梅津(うめづ)景春(かげはる)一回(いつくわい)の挨拶(あいさつ)おはり。此度(このたび) 官領(くわんれい)の名代(みやうだい)として某(それがし)まかりこしたるは別儀(べつぎ)にあらず。先(さき)だちて次男(じなん) 月若丸(つきわかまる)家督(かとく)の願(ねがひ)を出(いだ)されつるが。其(その)儀(ぎ)につきおん疑(うたがひ)のすぢありて。 某(それがし)にゆきむかひ糺明(きうめい)せよとの厳命(げんめい)なり。先(まづ)内室(ないしつ)蛛手(くもで)の方(かた)。花形丸(はながたまる)。執(しつ) 権(けん)不破(ふは)道犬(だうけん)をこれへよび出(いだ)されよといふにぞ。貞国(さだくに)かしこみ候とて。かく といひつがせければ。ほどなく蛛手(くもで)の方(かた)礼服(れいふく)をつけ。花形丸(はながたまる)もろともに 出来(いできた)り。はるかに下(さが)りて礼(れい)をなす。不破(ふは)道犬(だうけん)も礼服(れいふく)にて。椽(えん)がはに平伏(へいふく)