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【右丁】
かり退(しりそく)るといへども多人数(たにんじゆ)にてさりがたきゆへ小三郎など強(こう)
気者(きもの)ゆへに我前(わがまへ)にていたづらなせし国人をやにハに腕(うて)をね
ぢあけ庭(にハ)へつきこかせバ《割書:但(たゞ)し国人 肉食(にくじき)なせど水土(すいど)のかげんにて至(いたり)て力(ちから)|なし小太郎ものゝ見事につきたをし候》
此 勢(いきを)ひに少(すこ)しハ人もへるといへど只(たゞ)もや〳〵として食事(しよくじ)
もできず早速(さつそく)典官(てんくハん)より官(やく)人へ申 遣(つかハし)候へバ使(つかひ)と共に両人ま
いられ二三人も引(ひき)としへ共 杖(つえ)ヅヽも扣(たゝき)申され追(おひ)まハされしに
より皆々(みな〳〵)国人(くにひと)にげかへり心能(こゝろよ)く食叓(しよくじ)認(したゝ)め此後(このご)ハかよふなる狼(ろう)
藉(せき)も不致(いたさず)三 度(ど)の仕度時(したくどき)にハ三十人四十人ヅヽも表(おもて)より見物(けんふつ)
いたし居(ゐ)申ことハたび〳〵の事(こと)なり惣(すべ)て西山(さいざん)に逗留(とうりう)又此場へ
【左丁】
来(きた)り候て三度の朝夕(てうせき)只 飯(めし)ばら〳〵としてあじなく日本のき
らずよりもふあじなれば《割書:但し豆腐(とうふ)の|からのこと也》折(をり)ふし男(おとこ)の食(めし)多き候を
みるに米(こめ)を洗(あら)ひ瀬戸物(せともの)の釜(かま)へ《割書:此国 鍋釜(なべかま)一 切(さい)なし何によらず皆(みな)〳〵瀬(せ)|戸(と)物斗也つるべまでも焼物なり桶(をけ)るい》
《割書:一切なし湯(ゆ)を遣(つか)ふもせと物|なり又ぬり物るいハなしなし》水を入 程(ほど)なく吹(ふき)上り候せつのこらずめ
しのねばりしゆばを取すて焼(たき)候故ふしんに存(そんじ)尋(たつね)けれバ
南国(なんこく)にて年(ねん)中 寒気(かんき)のさわりなく米三度ツヽ実(み)のり日本
はしらず廣東(かんくう)抔(など)よりふあじの由申その上 肉食(にくじき)多(おゝ)き
土地(とち)にて米(こめ)のゆばをとらず焼(たき)候てハ米つよく短命(たんめい)のよし此
地(ち)何(いづ)れにても此通りときゝ国風(こくふう)なることをかんじけり