翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

南漂記 - 翻刻

南漂記 - ページ 26

ページ: 26

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【右丁】 人は六人の病人(びやうにん)を撫(なで)つさすりつ片時(かたとき)も側(そバ)をはなれず神 佛へハ祈誓(きけい)をかけ願(ねが)ふと言(いふ)とも命数(めいすう)の限(かぎ)りなるか前後(ぜんご) 六十日に六人の病人(びやうにん)ハをい〳〵相果(あいはて)けること誠(まこと)に生者(しやうじや)必滅(ひつめつ)と ハ言(いゝ)ながらあじきなき世(よ)の中(なか)遠(とふ)き異国(いこく)の土となり夢(ゆめ) うつゝのごとく今更(いまさら)のよふにおもハれ残(のこ)りし者も心細(こゝろほそ)く 行末(ゆくすへ)のこと案(あんじ)られ涙(なみた)袂(たもと)をしぼりうき月日(つきひ)をぞ送(をく)り けりとりわけ六人の内にハ古郷(こきやう)に年(とし)よりし父母(ふぼ)のあるも あり幼(いとけな)き子(こ)の母(はゝ)ハ死(しに)うせて貧(まつ)しき一家(いつけ)へ預(あつ)け置(をき)その 身ハ此所の土(つち)となり又母一人子一人にて外に頼(たの)むべき方の 【左丁】 なきもありされども浮世(うきよ)のならひにてなきにしことには あらざれば官人(やくにん)の差圖(さしづ)にまかせ永長寺(ゑいてうじ)といふ寺へ六人と もそのたび〳〵に葬(ほふむ)りけり     永長寺 王城(わうじやう)乾(いぬい)の方一里半斗にして永長寺(ゑいていじ)ハ禅宗(せんしう)にて國王 の菩提所(ほだいしよ)なり當時(とふじ)の住持(しゆうじ)法雨(ほふう)和尚(をしやう)ハ古稀(七十)のよわひとも 見へ甚た殊勝(しゆせう)なる禅師(ぜんし)なり寺(てら)ハ方(ほう)二町斗にして寺(じ) 中(ちう)も門(もん)を双(なら)べ境内(けいだい)にハ松(まつ)杦(すき)柏(かしハ)楠(くすのき)繁茂(はんも)し群鳥(くんてう)集(あつま)り