翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

南漂記 - 翻刻

南漂記 - ページ 3

ページ: 3

翻刻

【右丁】 ひなく生(なま)米をかみ日を送(おく)りくらす内 咽(のと)よりハけむりの ごとくの息(いき)いで其(その)せつなきこと焦熱(しやうねつ)の苦(くる)しみも斯(かく)あら んと打よりて只(たゝ)泣(なき)かなしみいたりしが七日までハ辛(つら)き 命(いのち)をつなぎけり最早(もはや)今一日も水なくてハ叶ひがたくその 夜九ツ時に十六人とも髪(かみ)を切太神宮一 立願(りうぐわん)の申上 雨乞(あまこひ)祈(いのり) 候所御神の恵(めぐ)みにて明(あく)る八日暁か(あかつき)がたより空(そら)かき曇(くも)り 半日ばかりも大雨 頻(しきり)に降(ふり)つゞき水 桶(をけ)手桶たらい鍋(なべ)釜(かま) にいたるまで天 水(すい)をとり置(をき)少(すこ)しハ人心地になること神(かみ) の納受(のうじゆ)の有(あり)がたくめい〳〵身を清(きよ)め太神宮を □拝(ふしおが)み渇(かつ)を 【左丁】 凌(しの)ぎ暫(しはらく)息(いき)を休(やす)めけるものや石の巻(まき)をいで□より日を かぞへ見れバ凡八十日ばかりになり流(なかれ)次第にていかなる国へ 着(つく)ことやら心細(こゝろほそ)き事いふばかりなし只(たゝ)明(あか)しくらし浪(なみ)に 漂(たゞよ)ひ四五十日も山は見得ず誠(まこと)に世界(せかい)の大灘(たいなん)にて爰(こゝ)を 見かしこを詠(なかめ)ても舩(ふね)もなけれバ浦(うら)もなく空飛(そらとぶ)鳥(とり)を 友(とも)となし日をおくる其内(そのうち)に天水多く呑(のみ)しゆへにや十 六人とも不残(のこらす)面躰(めんてい)手足まで種(はれ)ふくれ腹(はら)は次第(しだい)に張(はり) 満(みち)て目ハほそくなり我も〳〵と指(ゆび)を以(もつ)て手足を押(を)せバ 壱寸ツヽも深(ふか)くゆびの跡(あと)つくにぞあらぬことども取交(とりまぜ)て