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【右丁】
しけるが官人衆よりさしつあり程(ほど)もしれざる逗留(とふりう)な
れバいづれへなりとも見物(けんぶつ)またハなぐさみに出(いで)候ことく
るしからずとのことゆへ夫(それ)よりハこゝろ任(まか)せにめい〳〵城下(じやうか)
の内又は町はづれまでもあるき近所(きんじよ)となりへもは
なしに行(ゆく)にいつとなく馴染(なじみ)も出来(でき)とりわけ一二軒
となりに六十斗の老嬉(ばさま)男子(なんし)三人もてるあり《割書:兄ハ三十五六才|中三十才くらい》
《割書:弟廿五|才斗》此 家(いへ)へ度々(たび〳〵)遊(あそ)びにゆき候へバ老嬉(ばさま)ハいつも茶(ちや)など
いれ候て心能(こゝろよく)丁寧(ていねい)にもてなしけり折(をり)ふし老人(ばさま)留主(るす)
のせつ直様(すぐさま)もどり候へバ老母(ろうぼ)帰(かへ)り候てけふハ客人(きやくじん)ハ見得(みへ)す
【左丁】
やと三人の子(こ)どもへ尋(たづ)ね直(ぢき)に戻(もど)りしことなど聞(きゝ)候得ば
三人をしかり候事 深節(しんせつ)いわん方(かた)もなしまた四五 軒(けん)過(すぎ)て
酒屋(さかや)あり是(これ)ハ勝手(かつて)能(よき)くらしと見へ家内(かない)も十五六人も
あり風与(ふと)一度(いちど)立寄(たちより)しより其後ハ毎日(まいにち)彼方(かのかた)よりも呼(よ)びに
来(きた)り日々此 家(や)へ行(ゆき)心(こゝろ)のせくことなき身(み)の上(うへ)なれバいつ
も朝(あさ)より暮(くれ)まで又ハ半日(はんにち)ヅヽも長(なが)ばなしをなしめい〳〵
かハり〴〵に馳走(ちそう)になり四方山(よもやま)の物語(ものかたり)をなし少(すこ)しハう
さをはらしける亭主(ていしゆ)四十才あまり女房(にようぼう)二十七八才に
て子(こ)ども二人(ふたり)あり惣領(そふりやう)ハ男子(なんし)なり次(つぎ)ハ二才の小児(しやうに)にてせ