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【右丁】
はなしなり又 家毎(いへごと)に門のしまりもなく惣(すべ)て大戸(をゝと)ハ皆(みな)
々(なが)〳〵二階(にかい)の方へさし上けせんにて留置(とめをき)暮時(くれとき)にハ上(うへ)よりお
ろし寝鎮(ねしづまり)候節も貫抜(くハんぬき)かけかね錠(でう)などハ一切(いつせつ)なし甚
不用心(ぶようじん)なりし〆(しま)りなり近(ちか)き嶋国(しまくに)より盗賊(とうぞく)あまたは
いくわい致(いた)しかなたこなたへはいること数(かす)かぎりなし旅(りよ)
宿(しゆく)へも三度まで盗賊(とうぞく)来(きた)り候所四五人の気性者(きせうもの)我〳〵と
割木(わりき)その外(ほか)手(て)ごろの品(しな)を持(もち)追(をつ)かけ行しにその烈(はげ)しき
に恐(おそ)れしや見向(みむき)もせずにけかへりけるを一人にてもたゝき
臥(ふ)せこらさんと三四町も濱(はま)まで喚(わめき)ちらし追行(をひゆき)しに
【左丁】
磯(いそ)ぎわに繋(つなぎ)ありし舟(ふね)へ飛乗(とびのり)〳〵手早(てはや)に棹(さほ)さし逃(に)げ
帰(かへ)りしハ心地(こゝち)よく皆々(みな〳〵)手を打(うち)笑(わら)ひ宿所(しゆくしよ)へかへりけり扠
都合(つがふ)三度にも及(をよ)びしかハ後また来(きた)りしことも有(ある)べしと
太(ふと)き竹(たけ)大(をゝ)きなる木(き)にて用心棒(ようしんぼう)をこしらへ置(をき)をのれ今(いま)
一度 来(きた)りなバ手(て)なみの程(ほど)をみすべしと毎夜(まいよ)油断(ゆだん)もせ
ず休(やす)みれけどいつも同(をな)じ盗人(ぬすびと)にてありしや又ハ此方の
いきをひにおじけるか再(ふたゝ)び来(きた)らざりしハ心(こゝろ)よくもおも
ひける又 城下(じやうか)を毎日(まいにち)〳〵歩行(あるき)候せつ異形(いぎやう)の人を見(み)しに
弐尺四方又ハ三尺四方にて厚(あつ)さ壱寸斗もある板(いた)を首(くび)