翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

南漂記 - 翻刻

南漂記 - ページ 58

ページ: 58

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【右丁】      夫婦別 天地(あめつち)開(ひら)け始(はじめ)しより人間(にんげん)鳥獣(てうぢう)艸木(そうもく)まて陰陽(いんやう)雌雄(しゆふ) のわかちあり人(ひと)に夫婦(ふうふ)の道(みち)定(さたま)り普天(ふてん)の下(した)四ツの海(うみ)の 隅(すみ〴〵)まで神(かみ)の御末(みすへ)のかたしいハやまともろこし替(かわ)りなし されども命数(めいすう)の定(さだま)りありて何(いづ)れ一度(いちど)ハ跡先(あとさき)に此 世(よ)を去(さ)る を會者(ゑしや)定離(しやうり)と説置(ときをき)給ひし佛(ほとけ)の教(をし)へ金言(きんげん)なり安南 国に逗留(とふりう)の内(うち)男(おとこ)ハ死(し)して女(をんな)孀(やもめ)となるもあり若(わか)き女の 過(すぎ)さりて亭主(ていしゆ)の跡(あと)に残(のこ)るあり偕老同穴(かいろうどうけつ)と契(ちぎ)りしも 冥途(めいど)黄泉(こうせん)の旅(たび)におもむくハ生(せう)あるものゝ習(なら)ひにて 【左丁】 我人(われひと)よく知(し)ることなれどかわりし事ハ此国の風義(ふうぎ)にて 老(おひ)たるも若(わか)きにも夫(をつと)に離(はな)れ妻(つま)にわかれし其(その)一夜(ひとよ)ハ赤(あか) 裸(はだか)となり添臥(そいふし)なし明(あく)れバ野邊(のへ)の送(おく)りのいとなみをなす ことたとへ何ほとの悪(あし)き病(やまひ)にて死(し)せし人といへど此世(このよ)の名残(なこり) とて抾席(しんせき)を同(おな)じふすることハ殊勝(しゆしやう)にも思(をも)ハれけり又 諸土(ふけ) 方(がた)町人百姓にても連添(つれそふ)夫(おつと)の遠(とふ)き国(くに)などにて過去(すきさ)りし はその便(たよ)りの聞(きこ)へし日(ひ)より頭(かしら)の髪(かみ)を解(とき)きおろし真(まん) 中(なか)を白(しろ)き紙(かみ)にてくゝりさげ髪(かみ)となし中陰(ちういん)を勤(つとむ)る こと彼国(かのくに)にある内(うち)にこゝかしこにて見聞(けんもん)せしあらまし