← 前のページ
ページ 83 / 104
次のページ →
翻刻
【右丁】
腰懸(こしかけ)家々(いへ〳〵)にあり寒中(かんちう)などはさむき事にてあるべしと
申あへり《割書:但し此国へ来り候 節(せつ)は川口へ見物(けんふつ)人|多来り町筋(まちすじ)にても殊外(ことのほか)郡集(くんじゆ)せり》
花嫁
此國 逗留(とうりう)の内 向成(むかふなる)家(いへ)に婚禮(こんれい)あり珍敷(めつらしき)中華(ちうか)の嫁(よめ)いり
を見(み)ることよと其日を相待所(あいまつところ)婚礼(こんれい)三日前に義式(ぎしき)有(あり)
て一家(いつけ)近附(ちかつき)出入の人を呼(よ)び三日 過(すぎ)て嫁(よめ)来(きた)る時(とき)は婢(こしもと)と
も云(いふ)へき女(をんな)能(よき)衣装(いしやう)を着(ちやく)し紅粉(べにおしろい)を面(おもて)にいろどる足(あし)
には六寸斗のきれ細工(さいく)の沓(くつ)みるよう成ものをはき先(まづ)一番(いちばん)
【左丁】
に綿(わた)の袋(ふくろ)に入し枕(まくら)を一ツヅヽ両人の女 持(もち)つぎに種々(しゆ〳〵)の手
道具(とふぐ)を持凡女斗 片側(かたかわ)に十五人ほどツヽ静(しづか)にあゆみ脇目(わきめ)
もふらず来りしが此方どもも珍敷(めずらしき)ことゆへに門(かど)口にいで詠(ながめ)
しに右の女ども日本人の風俗(ふうぞく)のかわりし事 目(め)に付(つき)し
や行烈(ぎやうれつ)もそこ〳〵立とまり見(みい)入り居(ゐ)る内に嫁(よめ)の乗物(のりもの)
《割書:但し安南国に格別(かくべつ)かわりなし後の|方にこしかけ有左右にひぢ持せあり》傍近(そばちか)く来り織物(おりもの)の錦(にしき)の
蒲團(ふとん)を重(かさ)ね敷(しき)衣装(いしやう)の裾(すそ)を両方へ出し乗物(のりもの)の戸をたて
候故中の様子(やうす)もわからず何卒(なにとそ)いか躰(てい)の女(をんな)なるぞ見度(みたく)おもふ
内 無程(ほどなく)向ふ成 門(かど)へ来りしに出 迎(むかい)の者(もの)あたりを拂(はら)へは嫁(よめ)も我(われ)