翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

南漂記 - 翻刻

南漂記 - ページ 84

ページ: 84

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【右丁】 〳〵(われ)を見度(みたき)にや乗(のり)ものゝ戸を明(あけ)させ詠(なが)めける其(その)粧(よそほ)ひ頭(かしら) には天冠(てんぐはん)のごときものをかざり顔(かほ)は薄化粧(うすげしやう)にして氣(き) 量(りやう)至(いたつ)てよく縫(ぬい)ある絹(きぬ)を上(うへ)にまとい尋常(しんじやう)なる目もと 口元にて差(さし)覗く両方には中女(ここしもと)色能(いろよ)きもやふの絹布(けんふ)を 着(き)てはこに立 嫁(よめ)は一心不乱(いつしんふらん)に此方をみる又 手前(てまへ)よりは 嫁(よめ)を詠(なが)を未(いまた)聟(むこ)にもみせざる花嫁(はなよめ)を穴(あな)のあくほど見(けん) 物(ぶつ)せしも漂流(ひやうりう)人の一 徳(とく)にて是(これ)ほと花(はな)やかなりしこと は長(なが)の旅路(たひぢ)に只(たゞ)一度とみな〳〵興(けふ)じけり 【左丁】     墓所藏 朝(あした)には夜明(よあけ)の鐘(かね)朗(ほがら)らかに聞(きこ)へ夕部(ゆふべ)には鐘(かね)の音(ね)に無(む) 常(ぢやう)を勧(くはん)じ喜(よろこ)び有(あ)れば愁(うれ)ひある浮世(うきよ)の習(なら)ひにてまし て中華(うち)【から?】の嫁入(よめいり)にみな〳〵興(けふ)を催(もよ)ふせしが其次(そのつき)の日は古 八軒(けん)隣家(りんか)に不幸(ふかう)有(あり)向成(むかふなる)家(いへ)には悦(よろこ)びの酒盛(さかもり)隣家(りんか)は かなしみに人を集(あつ)め我々(われ〳〵)も人の事にはあらずと早々(そふ〳〵)便舟(びんせん) を相待(あいまち)ける扠(さて)明(あく)れば隣家(りんか)より晝過頃(ひるすぎころ)野邊送(のへをく)り有(ある)よし これまたはなしの種(たね)にもと皆々(みな〳〵)打連(うちつれ)其家の向ふ一 廻(まは) り見物(けんふつ)せしがほどなく出家(しゆつけ)先(さき)に立(たち)線香(せんかう)又は花盛物(はなもりもの)