翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

南漂記 - 翻刻

南漂記 - ページ 93

ページ: 93

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【右丁】 し前 老(をい)たるも若(わか)きも男(をとこ)ばかり女(をんな)は一人もなく川端(かわばた)に 立(たち)ならび見物(けんぶつ)郡集(くんしゆ)なすこと引(ひき)もきらす山のごとく 集(あつま)りしを此方よりも延上(のびあが)り〳〵見る左の方に城下(しやうか)見(み)へ また其(その)手前(てまへ)に五重塔(ごぢうのとう)有(あり)舩(ふね)は次第(したい)に走(はし)り行(ゆく)跡先(あとさき)三里 斗の間 川端(かわばた)両岸(りやうきし)とも蜜柑林(みかんはやし)にて枝(ゑた)をたわめて実(み)のりし は幾千万(いくせんまん)の限(かぎ)りしれず只(たゞ)脇目(わきめ)もふらず詠(なが)め此所を乗(のり) 過(すぐ)ればかなたこなたに多(をゝ)く白鳥(しらとり)枝々(ゑだ〳〵)に留(とま)り下(した)におり 啄(ついはみ)するもあり向(むか)ふをみても手前(てまへ)を見(み)ても白(しろ)がらす斗 にて黒(くろ)きは一羽(いちわ)もなく奇成ことにおもひ夫(それ)より終始(しじう)追(おひ) 【左丁】 風(て)に走(はし)りしが二日 毎(ごと)一ケ国二ケ国ヅヽも舟中(せんちう)より城下(じやうか) を詠(なが)め其(その)所々(ところ〳〵)に五重塔(ごぢうのとう)有(あり)左甫(さふ)の川口までに凡 城数(しろかず) 四十七八ケ所を見るに何(いづ)れの地(ち)といへど川より半道一里 又は二里ばかりも有三里も向(むか)ふは目(め)に及(をよ)ばす遠方(ゑんほう)より よくみゆるは五重塔なり川(かは)續(つゞ)き両岸(りやうきし)とも四五十日の 間 村々(むら〳〵)在々(ざい〳〵)ありて所々(しよ〳〵)にての見物(けんぶつ)人 已前(いぜん)のごとしされ ども女(をんな)は何方(いづかた)にても一人も出(いで)ず無程(ほどなく)十二三日目にシツコン と云(いふ)所(ところ)の川口(かはぐち)へ着(つき)此所より官人(やくにん)諸共(もろとも)陸(くが)へ上(あが)り暫(しはらく)見合(みあわ)し ゐる内 時刻(じこく)八ツ過(すぎ)とおもふ比(ころ)沖(をき)の方(かた)より津浪(つなみ)のごとく二