翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション3

目さまし草 - 翻刻

目さまし草 - ページ 10

ページ: 10

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ころたゞひとひきすひたるはいはんかたなくぞおぼゆる憂(うき)に つけ楽(たの)しきにつけてもこれを伴(ともな)はざれば悶(もだゆ)る気(き)もひらかず 嬉(うれ)しき心(こヽろ)ものびざるがごとし近(ちか)き世(よ)の人(ひと)のはいかいのほくとて  西行(さいぎやう)の秋(あき)はたばこもなき世(よ)かなといひしもさることぞ かしすでに此物(このもの)世(よ)にあまねくひろまり人ごと家(いへ)ごとに 用(もち)ふることになりては客人(まらうど)をもてなすにもまつ前(さき)に是(これ)を 進(すゝ)むるを常(つね)のならはしとすることになむなりけるいはむもかしこ けれどそれのみかどの御製(ぎよせい)とて  もくづたくあまならねどもけふりくさなみよる人のしほとこそなれ とよませ給(たま)へりとかまた妙法院(めうはういん)の宮(みや)の御言葉(おんことは)とてたばこに 七(なゝつ)の徳(とく)ありとの給ひしものも見(み)えたり又(また)もろこし人は一名(いちみやう)を 相思草(さうしさう)といひて人ひとたびこれを吸(す)ふときは朝夕(あさゆふ)思(おも)ひこがれ て止(やむ)ときなしとなんとにもかくにもあやしきまで人のめつる 草(くさ)にこそありけれ    伝来(でんらい)の諸説(しよせつ) 当時(そのかみ)慶長(けいちやう)のあひだ異国(いこく)人のこゝに往来(ゆきゝ)ありし頃(ころ)はじめて其(その) 種子(たね)をうゑしとぞ又 乾(かわ)ける葉(は)を巻(まき)て管(くだ)のことくにし一頭(かた〳〵)に 火(ひ)を点(てん)じ一頭(かた〳〵)よりこれを吹て薫服(かをら)することは猶(なほ)それより以前(さき)の 事(こと)なるべしさてもろこしに伝(つた)へし始(はじ)めは明(みん)の万暦(ばんれき)の頃(ころ)偶(たま〳〵)これ を服(ふく)する者(もの)あり崇禎(そうてい)になりては頗(すこぶる)すふ者(もの)もおほかりしとなん