翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション3

目さまし草 - 翻刻

目さまし草 - ページ 9

ページ: 9

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しめ醒(さむ)ればゑはしめ酔(ゑへ)ばさますとぞ世(よ)の人なべて此(この)功徳(くどく)を知(し)り世界(せかい)の かぎり所(ところ)として此草(このくさ)を植(うゑ)ぬもなく人として此葉(このは)を嗜(たしま)ぬもなく世(よ)に行(おこなは)れて 年暦(このかた)百年(ひやくねん)にも及(をよ)びしころほひより詩(し)にも賦(ふ)し歌(うた)にも詠(えい)しこれを 称美(しようび)して止(やま)す其(その)くさ〳〵の徳(とく)をいはんにはあつさをも忘(わす)れ寒(さむ)さをも しのぎ夏(なつ)の日永(ひなが)の眠(ねふり)かちなるをさまし春(はる)の曉(あかつき)の覚(さめ)がたき夢(ゆめ)をも やぶりあるは秋冬(あきふゆ)の夜(よ)ながき老(おい)が身(み)のねふりかたきには従者(ずさ)女(めの)童(わらは) などたばこ吸(す)ふ火(ひ)はありやなしやと問(と)ひてわびしきを助(たす)くる 心(こゝろ)しらひを喜(よろこ)び又(また)何(なに)くれと物(もの)かなしきうきをもわすれあるは すまのうらさびしきひとり住(すみ)の身(み)のうへにはよきしほかまのけふり 草(くさ)とも知(し)らるゝなりある人の口(くち)ずさめるに  昔(むか)し誰(た)が寝覚(ねざめ)の床(とこ)のさびしさを忘(わす)るゝ草(くさ)の種(たね)はまきけんと あるもさることなり又 貞柳(ていりう)とかいへるものゝ狂歌(きやうか)とて 雲(くも)と見(み)る芳野(よしの) たばこのうすけふりはなのあたりを立のぼるかなと戯(たは)むれしも おかし又(また)親(した)しき友(とも)とちよりつとひて旧(ふる)きをかたらひつるにも これなくては其(その)しほなきにも似(に)たりたとひ山海(さんかい)の珍味(ちんみ)をつく せる酒宴(しゆゑん)のむしろにも時々(とき〳〵)これを吸(すは)ざれば物(もの)たらぬ心地(こゝち)す又(また) 野辺(のべ)の遊(あそ)び川(かは)せうえう月(つき)の前(まへ)。花(はな)のもと。酒(さけ)の後(のち)。茶(ちや)のさきにも この煙(けふり)をかをらし雨(あめ)に対(たい)し雪(ゆき)を賞(せう)し閑窓(しづかなるまど)のうちにひとりつ くゑによりて物(もの)かうがへる折(をり)ふし又 旅(たび)ゆく朝戸出(あさとで)にたばこ吸(すひ)な からにあゆめる趣(おもむき)又(また)家(いへ)のうちにありてもあやにくに事(こと)しげき