翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション3

目さまし草 - 翻刻

目さまし草 - ページ 15

ページ: 15

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ありてあつしくなりゆく時(とき)はのりものにかきのせて深山(みやま)に捨(すつ)るなら はしなりとぞ昔(むかし)其国(そのくに)に一人(ひとり)の婦女(をんな)ありて重(おも)き病(やま)ひをわづらひ しを例(れい)のごとく山(やま)の奥(おく)にかきすてゝ人々(ひと〳〵)立帰(たちかへ)りぬ其(その)婦女(をんな)夢(ゆめ)うつ のごとくありしうちえならぬ香(か)のしけるまゝに忽(たちま)ちめをひらきて あたりを見(み)つるにいまだ見(み)なれぬ草(くさ)生(お)ひしげれりはひよりて これを嗅(かぐ)にすなはち身(み)のうち清(きよ)くすゞやかに覚(おぼ)え今(いま)まで 病(やまひ)にをかされ居(ゐ)たりしに夢(ゆめ)の覚(さ)めたるごとく一身(いつしん)まめやかに こゝろよくなりにければ己(おのれ)なやめる中(なか)にこゝに捨(すて)られし事(こと)をはじ めてさとり扨(さて)そこをいそぎ下(くだ)りて我家(わがいへ)に帰(かへ)りぬ家(いへ)なる人々 しか〳〵の物語(ものかたり)をきゝてそはいとあやしき薬(くすり)なりとてやがて 其草(そのくさ)を得て世(よ)に伝(つた)へしが即(すなはち)これなりといへりこれ仮(かり)に作(つく)れる 説(せつ)にて取(とる)にたらず又 同(おな)じき別説(べつせつ)に南蛮国(なんばんこく)に一人(ひとり)の婦女(をなご)あり 名(な)を淡婆姑(たんばこ)といふ数年(すねん)痰(たん)の疾(やまひ)を患(うれ)へしを此草(このくさ)を服(ふく)して 全(まつた)く瘳(いゆ)る事(こと)を得(え)たりそれより此草(このくさ)を淡婆姑(たんばこ)と呼(よべ)りといへり 思(おも)ふにこれたばこの字音(じをん)を填(うづめ)し字面(もじ)女(をんな)に従(したがひ)し婆姑(ばこ)といへる二字(にじ) あるによりて女(をんな)の名(な)なりと附会(ふくわい)し設(まう)けたる妄説(もうせつ)なり 和蘭(おらんだ)の書(しよ)によりて万国(ばんこく)の事(こと)をかんがふるに此(この)もの北(きた)のあめりか 洲(しう)といふ世界(せかい)に「タバゴ」といふ小島(こしま)あり其地(そのち)に生出(おひいで)し草(くさ)なりしを 弐百十余年(にひやくじふよねん)の昔(むかし)ゑうろつぱといふ世界(せかい)なる某(それ)の州(くに)に「ニコツト」と いへる人(ひと)其島(そのしま)の産(さん)をとり出し携(たづさへ)て其国(そのくに)に帰(かへ)り移(うつ)しうゑしに始(はじま)りて