翻刻
静盧北氏(せいろきたうぢ)の蔵書(ざうしよ)閑話随筆(かんわずゐひつ)に載(の)する妙法院宮(みやうはうゐんのみや)たばこの徳(とく)に
七(なゝ)ふしぎありとの給(たま)ひし御言葉(おんことば)を煙葉(たばこのは)に象(かたど)り書(かき)ならへたる図(づ)
妙法院尭延
たは粉といふ草のたねは誰か開初やまと唐にひろまり
足なくして旅行の友とす
水なふして口中を清めり
かやくなくして
気うつを
散す
宮御言葉声なくしてねふりをさますなり
物いはずして客の
挨拶す
芸なくして月花の
興を催す
笑ずして
衆人に
愛敬す
上中下の人あまねくもてあそへり其徳といふに七ふしぎあり
按(あんずる)に本書(ほんしよ)何人(なにひと)の作(さく)なる事(こと)をしらず
我(わが)磐水大人(ばんすいうし)の蔫録(えんろく)を編集(へんしふ)し給(たま)ふは此草(このくさ)の濫觴(らんしやう)と主治(しゆぢ)功害(こうかい)を詳(つばら)に
皇朝(みくに)の人 異国(ことくに)の人にも示(しめ)し給(たまは)んとの素意厚情(あつきこゝろざし)なり然(しか)るに編中(へんちゆう)に雅(が)
賞(しやう)詩文(しぶん)煙具(えんぐ)の諸図(しよづ)等(たう)に至(いた)るまでを雑集(ざつしふ)し給へる故(ゆゑ)に全編(ぜんへん)を熟(よく)
読(よま)ざるものはたゞ其(その)諸図ある巻(まき)を見(み)てこれ偏(ひとへ)に好事者(かうずのもの)流の雑(さつ)
著(ちよ)の如(こと)く見(み)ながす輩(ともがら)もありとか然(しか)れどももとさるたぐひにはあらぬ
なり抑(そも〳〵)我(わが)大人(うし)其(その)本志(もとのこゝろざし)の大いなる趣意(しうい)といふものはかゝる太平(たいへい)に
生(むま)れあへる人々 空(むな)しく其(その)天年(てんねん)を損(そん)する事(こと)あらんを患(うれ)ひ全部(ぜんぶ)
三巻(さんぐわん)の通編(つうへん)を総括(すべくゝり)其常(そのつね)に思(おも)ふ所(ところ)を以(もつ)て巻尾(まきのおはり)に於(おい)て懇(ねもころ)に説(と)き
給へるは附考(ふかう)又 余考(よかう)といふものにあり然(しか)れどもこれ又から文字(もじ)
に綴(つゞ)りて通俗(つうぞく)のものにあらざればこれを読(よ)み暁解(さとりとく)もの少(すくな)き歟(か)