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翻刻
【右丁】
これより何丸。何若などの童名をあらため烏帽子親之名の一
字を請る事もあり又将軍之御名乗之字を一字申受る事も
あるなり
烏帽子名といふ事は元服之時改めたる名をいふ
元服をなしてより其家相応之官位を給はるものなり
小刀は新しき小刀をとぎて紙にて柄を包み烏帽子親より
出すもの也盤を用ゆる時は盤に小刀を添へ出すべし
盤は髪をはやす時元服之人盤の上へうつぶくはやし親髪
をこの盤へあて切(ハヤス)也盤は柳之木にて長サ一尺二寸五角高サ
七寸に作るべし
鬢具。紙などを取りそろへ打乱箱にのせ置くべしこれは元
【左丁】
服人之方にて相調へ置くべきものなり
元服相済て後一門打寄り祝酒あるべし此時烏帽子親へ引
出物を出すもの也
当今前髪をおとして月代(サカヤキ)をするを本元服と云これは近代
之事にて古にはなき事也将軍は月代をなされども鉄漿は
付けさせられず公家にては月代はなさらざれとも鉄漿を
つけたまふ公卿は元服に眉毛をすり取り額之左右におび
んぶくをなされはね眉を置き鉄漿を付らるなり右之通
それ〳〵別ある事ゆへ一概に心得べからず
男子之天児は元服之当日膳を供へ吉日を撰び祝儀を添へ
祈念所へ還すべし是は天児久しく身を守護し給ふ礼也