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翻刻
【右丁】
庖丁をなすに区別ある事
庖丁をなすに三之区別あり式の庖丁、遊興の庖丁、ふくさ様
《割書:これを水|切とも云》是なり式の庖丁之内に連り庖丁あり楽の庖丁あ
り楽の庖丁にはらん刀、かん刀などを用ゆ筋にも又別あり
大秘口伝
世に庖丁家と称して人に教ふるものゝ内十ニ八九迄は庖
丁之区別を知らず式の庖丁といふて式か遊興かわけの
わからぬ庖丁をなし又場所をも撰ばず遊興とふくさ様
と相混じたる庖丁をなし魚鳥を切るにも其別あるを知
らず総じて一切之肉一片之骨といへども俎上に排置す
るに一々其法之ある事をも顧みず恬然として己が心に
【左丁】
はぢず剰さへ人を瞞着するに至る具眼者よりこれを見
る時は恰もおどけの如しはづべきの至りならずや
庖丁刀水撫及筋之手其他之事
水撫之手に五拾三ケ条筋之手に拾ケ条俎紙之手に五ケ条
俎がために八ケ条ありこれは庖丁之勤方と庖丁をなす魚
鳥之別とによつて分ちあるものなり右は一子相伝にかゝ
るもの多きゆへ記るさず
俎舁出る事
両人して俎之左右を持出て御前近く程よき所へすへ置き
両人とも直に貴人を後にせざる様にして退くべし俎之す
へ場所に伝あり