← 前のページ
ページ 172 / 282
次のページ →
翻刻
【右丁】
座上に美なるものを設けけるか今缺ものは松江の鱸魚
なりといひけれは左元放といふ仙人術を以て銅盆に水
を入れ座中にて鱸魚を盆より釣り出して興をそへたり
東坡は巨口細鱗の魚を得て赤壁に遊ぶ此魚色白くあざ
ちけきゆへに銀魚と名く鱸魚について異朝之故事多あ
れども略す我朝にても平家繁昌せんしるしにや清盛が
舟中へ鱸魚飛入たる事ありこれは熊野権現の御利生と
申伝へ侍る
鱸之庖丁極秘切形之名称
四季鱸 諸身鱸 陰陽鱸 川 鱸 早川鱸
海 鱸
【左丁】
右之内に皆伝之ものにあらざれば許さゞるものあり
鰈
かれひといふ魚は半面魚之事なりもろこしにて呉之国と
越之国と合戦ありし時合戦の半に呉之国の王闔廬半面魚
を取り生なる魚之右の肉をそぎて食し曰く合戦之勝利を
守れと其侭海中に投ず其後越之国の王勾践も又半面魚を
取りて生なる魚の左の肉をそぎて食し同様にいひて同じ
くこれを海に投ず呉越之国之王之食あましたる魚なれば
とて王余魚と云この魚之うらは人に見せまゐらさぬもの
なりとて今之代に至るまで人前をはゞかるなれども爰に
口伝あり左之肉をそぎたる魚は腹之方外面になるゆへ外