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【右丁】
にあらず譬ば和歌之風体さま〴〵あれども三十一字をはづ
れ三十三字になせば言葉たくみにして品ありといへども
和歌にならず和歌を詠ずるに先づ題を定むるとひとしく
先づ器を定めざるべからず老人小児之食物は猶一層注意
し主人之好む物といへども其職にあるものゝ心遣肝要な
るべし
馳走之事
山海之珍味其器に満て取合多きとて馳走とは言難し一尾
之小鱗一もと之野菜といヘども心ばせを誠にしてよく調
ヘ礼を重んじ親みを専にしたる時は山海之珍味もいかで
かこれにしかんや北條時頼平宣時を招請ありし時自身に
【左丁】
銚子を持出肴こそなけれとて棚に有ける器に味噌の入り
たるを見出してまゐらせられしかば時頼之心ばせ誠ある事
をかんじ給ひ数献に及び興に入り甚喜悦ありしとなん又
食饗之礼は賓客に仁をなすべしと孔子も仰置れし事あり
これらの事は意味深き事也料理の品にかゝはらず主人礼を
重んじ調味之事にも心をはせもてなすを馳走と云也馳走
之文字になずみ主人珍物を買にはしり廻り料理之事にも
奔走するを馳走などゝいふ説あれども取に足らず笑ふべ
き事なり
献立之事
人之作たる献立たりとも非難すべからずこれを非難する