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【右丁】
より伝ふる式事の様にいふものあれども古は更に右様の
事はなき也心得違をなすべからず
犬張子に俗説多しといへども取に足らず犬は元来魔障
を退くるもの也故に紫宸殿に狛犬を置かれ所々之神社
之前にも狛犬を置かるこれ皆悪魔を退くる為に置かる
るもの也小児誕生之時も小児之傍に犬張子を置き犬張
子なき時は小児之額に犬之字をかく婚礼之時犬張子を
用ゆるも右之訳によりて也然るに婚礼之時用ゆる犬張
子に限り種々の説をなすは犬張子之主意を知らざるも
の也笑ふべき事なり古書に宿直之犬と書きあるはこ
の犬張子の事也犬張子の中ヘは御守などを入れるもの
【左丁】
なり
翌朝祝儀及使者之事
手掛及ひ式三献を法之如く済し夫婦に饗応あるべし嫁君
は早朝に里方両親へ使者を以て滞りなく相済し旨を申遣
はさるべし遠路ならば文にてこま〴〵と申遣はさるもの也
聟君之親よりも表向きの使者を以て同様に申遣すものな
り嫁君の両親よりも聟君之両親へ歓之使者を立らるゝも
の也表向の使者は双方より老女を遣すこれを女房の使と云
此使者へ絹などを給はるもの也と法之如くゆひ伝ふれど
も法にあらざるゆへ時宜にまかさるべし
俗に部屋見舞といふ事ありこれは中人以下の事なり心