翻刻
【右丁】
なとは多く飯䈰(めしいかき)に入/風(かぜ)すきのよき所につりおけ共(ども)
稍(やゝ)もすれば悪(あし)くなる。又/関東辺(くわんとうへん)江戸(えど)などは冬(ふる)【ママ】春(はる)
のとほり飯櫃(めしびつ)に釜(かま)より直(すぐ)にうつし蓋(ふた)をして風す
きよき所(ところ)におく䈰(いかき)に入(い)れしより腐(くさ)る事おそしとぞ
予(われ)思(おも)へらく飯(めし)の腐(くさ)るは櫃(ひつ)の蓋(ふた)にたまりし露(つゆ)の又
飯(めし)の中へ落込(おちこみ)其/露(つゆ)の落(おち)けりたる所より腐(くさ)るるな
るべしと。爰(こゝ)において飯(めし)を釜(かま)より櫃(ひつ)へうつし直(すぐ)に蓋(ふた)
をし暫(しばら)くおきてふたをとり其裏(そのうら)にたまりたる露(つゆ)を
布巾(ふきん)にて拭(ぬぐひ)とり又/蓋(ふた)をして暫(しばら)くおき。又とりて見るに
【右丁左下枠外】天保十三
【左丁】
初(はしめ)よりは少(すくな)けれども猶(なほ)露(つゆ)たまれりこれをもよく拭(ふき)とり扨(さて)
蓋(ふた)をして風すきよき所に置(おき)試(こヽろみ)るに敢(あへ)て腐(くさ)らず。七
月/中旬頃(ちうじゆんごろ)まても二日位(ふつかぐらい)は飯(めし)腐(くさ)る事なし。其内/随分(すいぶん)
米性(こめしやう)よきを吟味(ぎんみ)し上白(しやうはく)をいかにもよく洗(あら)ひて焚(たき)。右の
ことくして貯(かこ)へば別(べつ)に飯䈰(めしいかき)敷布(しきぬの)等(とう)を買(かひ)もとむるに
及ばず夏(なつ)秋(あき)ともに飯(めし)の腐(くさ)る憂(うれ)ひなし
○仲夏(ちうか)より仲秋(ちうしふ)まで《割書:五月より|八月迄也》飯(めし)を焚(たく)には米性(こめしやう)を糺(たゞ)
すべし。米性(こめしやう)あしきと洗(あらい)のたらざるははやく腐(くさ)るなり
随分(ずいぶん)よく洗(あらふ)べし。又/川水(かはみづ)にて焚(たく)と井水(ゐどみつ)にてたくとは