翻刻
こじゆん【ママ】らしくかたらるゝ。竹(ちく)三郎/承(うけたまは)り。いわれをきけは
面白(をもしろ)や。去ながら下(した)に庵(あん)をつけ候へば。はこくわんと
きこへ侍る也。又(また)斎をつけ候へば。はこくさいときこゆ
る也。老(らう)をつけ候へば。はこくらうとのとなへなり。然(しか)れ
ばいかゞ候へば。御/改(あらため)やなさるべき。憚(はゞかり)なからも。不図(ふと)存じ
より候/故(ゆへ)に。申上候也と謹而(つゝしんで)申ける。坡谷(はこく)きかれて
はらをたて初会(はつくはい)にこしやくのことばかな。貴殿(きでん)学力(かくりき)
なき故(ゆへ)に書籍(しよじやく)を曾而(かつて)見られねばかやうの例(れい)をし
り給はず。儒書(じゆしよ)に不(す)_レ限(かぎら)歌書(かしよ)にもあり。かながきなれば
見たまへや。古今集(こきんしう)十九。俳諧歌(はいかいうた)の部(ぶ)に。くそといふ
女の名侍るぞ。源(みなもと)のつく類がむすめと有(ある)_レ之(これ)也/文学(ぶんがく)も
則(すなわち)/死尸(しかはね)に。米(こめ)と云/文字(もじ)書(かき)て有(あり)。その哥(うた)にはよそながら
我身(わかみ)に糸(いと)のよるといへば只(たゞ)偽(いつわり)に。すくばかりなり
かやうに歴々(れき〳〵)の御息女(こそくぢよ)なれども。古人(こしん)は名(な)のとなへに
かまひなし。それのみならず公家(くげ)に大弁(だいべん)小弁(せうへん)の司(つかさ)有
神(かみ)にも雪隠(せつゐん)神(かみ)まします。仏(ほとけ)にも文珠(もんじゆ)しりと。おか
まれさせ給ふも有。武家(ぶけ)には。肥後国(ひこのくに)の住人(じうにん)。牛糞(うしぐそ)
左衛門忠澄(さへもんたゞすみ)と云(いふ)人も侍れば。われらていの名(な)のとなへ
あしきにかまふべき事ならず。其上/庵斎老(あんさいらう)の。三/字(し)
さへ付侍らねは悪敷(あしき)はきこへ申さぬ也。たとへあしく
きこゆる共。すきに赤(あか)ゑぼしなれば。此方(このはう)には少し
心にかゝる事はなし。そなたに気(き)がつきて遠慮(ゑんりよ)なく