翻刻
よむていにもてなし。是/返事(へんじ)してやれとて。目玉
之すけになげわたし。客(きやく)とあいさつさらるゝ内に
右之通(みぎのとをり)のつかひ。或銀一枚。或金弐分など包(つゝみ)ての
使(つかい)。三四人参りければ。客はにせ事とは夢(ゆめ)にも
志らず。さてもはやりいしやかなと心に於もひ。かなら
ず御出くたされ候へと。約束(やくそく)してかへるける。それより
木斎は。むかひ駕(かご)に/打乗(うちのり)て彼(かの)病家へおもむけば。
人はしをかけて侍るぬる。木斎を見かけ。遠方(ゑんはう)
の御出御大儀千万。忝そんじ候とて病人を見せ
ければ。もつての外の/大厄病(だいやくびやう)にて中々みやく
を見る事も。ならさるほどにあがきくるいける
然る所に。物の気つきたりとて。山伏近付て。いら
たかのしゆずをしもんでかんまんぼろおん。あびら
うんけんそわかと汗水になりていのり居たるが。木斎
来たるを見てなまなりなる薬は御無用。き祢ん
ばかりに。めされよと云。木斎はき年んが邪魔尓成
き年んをやめて。薬ばかりに。めされよと云て。た
がひに水かけ路んにおよべり。いづれも其證據
のあらされば。木斎申様客僧は子をもたれたり
中々もちたと云。さてはよき志やうこの。みやうこそ
あれ。我も子をもちたれば。我子は汝にわたさん
などに。ずいぶん調伏してころして見よ。汝が子は