翻刻
せぬ故当/分(ぶん)薬はきかぬやうにても。日/数(かず)にて病が
うすくなる道理も有。只下手の跡に。上手がかゝり
ても。手柄すくなきしさいは。せゝりちらす故也。先
上手にかけて兪ぬとき。下手にてもかけ。妙薬(めうやく)に
ても用て見/度(たき)事也。然るに白人/評判(ひやうばん)にて。下手の
天/然(ねん)礫(つぶて)のまくれあたりにて。仕合(しやわせ)よくはやるを実(まこと)に
思ひ。或は人にもすゝめられ。はやるといへば。ひたもの
に頼む程(ほど)に死まじき病人も死と見へたり。我
身に取ても覚へ有。病人にたのまれ。五日や十▢
にて此煩は験(げん)も有まじ。次第(しだい)につよく成へし峠(とうげ)
をこさずはげんるまじ。其内には定而(さためて)薬かはり
なん。人に手柄(てがら)を。とらるゝまでよと。思ふにたかわず病
人めんだうがりて。ことわりをいひ。余人(よじん)にかへ。他(た)の
手柄となす事有。又/他医(たい)の療治(りやうぢ)する病人有
大方やがて此方へころびかゝり。犬/骨(ほね)折て。鷹(たか)に
とらるゝごとく。此方の手柄とならんと思ふに。其
ごとく成事も。常(つね)に多しされば我をやの竹斎
がうたに。くすしには上手も下手もなかりけり。ひい
き〳〵に時の仕合(しやわせ)とよみしは金言ならずや。惣而
上手は。速功(そくかう)とて。速(すみやか)に効(かう)の有事をば。このまさる也
と。古人もいへり。但/病症(びやうしやう)にもよるべしと。いわ
るゝとき。大豆都(まめつち)と云座/頭(たう)。耳(みゝ)をすましてきゝ