翻刻
婬乱(いんらん)にてわつらひければ。いろ〳〵補(おきない)て漸(やう〳〵)治(ぢ)しける
とき。木斎狂歌をよみて送る
養性(やうじやう)は美服(ひふく)の厚着(あつき)大/酒(さけ)や先第一に夜事つゝしめ
梶右(かじゑ)衛門は深川(ふかかわ)にて舟歌(ふなうた)数年/聞(きゝ)しより外は
なけれ共
養性の内(うち)ならばこそあしからめ。そは何(なに)かわくるしかるへき
と口にまかせて返歌(へんか)せしは遊/山(さん)舟のうたひのそ
とわ小町きゝ覚へし故成べし。かくのことくたがひに
よみて無二の知音(ちいん)となりし程に。或/時(とき)梶右衛門。咄(はなし)のつ
いてに申せしは。木斎様の御/作(さく)意数/年(ねん)見申候に
奇妙千万(きみやうせんばん)成事ばかりにて侍る。是を病功(びやうこう)とや申さん
といへは木斎いかにも病功と云事も有儀也た
とへは馬をのりならふに鞍掛(くらかけ)にていひこして
本の馬にのるに木馬とは文字にては一/点(てん)の有無
の違計(ちがいはかり)にてのり心は各別の所有かことしされ
共心入によるべし。一年の功が。十年にもむかふも
有十年か一年にむかはさるも有へし。病功は
覚へすして。意(こゝろ)の働(はたらき)とはなるべし先輩(せんはい)の云く
病功は米を精(しゝぐ)るがことし一粒〳〵に杵(きね)はあた
らねと白/米(まい)と成かことしといへり。我も十五歳ゟ
医(い)に心さし侍るか貧(ひん)成まゝ。はやく食のたねにも
と思ひ。二十三四歳まで二/蔵(そう)三蔵/棒(ぼ)手ふり等に