翻刻
薬をあたへ。いかほとの人をか殺(ころ)しけん其(その)因果(いんくは)や
らは。終に上手とならす。むく犬の年老(としをい)たるやうに
次(し)第に闇のやうになりて。病人を見るたひことに
ふかひけが付て。初て知人になるがことくにて
いつもこまるばかりそ。それゆへきのふけふのいしや
にも。数度/仕負(しまく)る事有也。左あれは自慢の覚へ
露(つゆ)程もなし。且前(かつまへ)のりやうちか。すぐにならぬ
病に新久(しんきう)有。年に老若(らうにやく)有。病者(びやうしや)に虚実(きよしつ)有時に
寒暑有。土地(とち)にも東西(とうさい)のかわり有。持病を兼
ると兼さると有。一やう思ふ事を膠(にかわして)_レ柱(はしらに)皷(くすり)_レ瑟(しつを)と云
り。一度調子にあいたかとて。柱(はしら)を膠(にかわ)にて付て何/歌(うた)
にてもあはせんと云かことし。只昼夜(たゞちうや)病人の工夫(くふう)有
度(たき)事也と。申さる時。又問ふ病人は薬を。はやくかへ
たるかよく候や。一人のいしやに。いつまても懸(かけ)たるか
よく候也。答云それは病症により候也古しへの
明(めい)医の療治(りやうぢ)にも。二十剤三十剤にて愈るとある
医按(いあん)おほし。一/剤(ざい)を十ふくにしても二三百服に
もあたらんかやうの病人はやくかへてはよからんや
又一ふく二ふくの内に験(けん)がなくてかなはぬ症(しやう)有。そ
れをうか〳〵としてよからんや。薬をかへて利を
得しひと人は。ひたとかへ。人にもかへよと異見云又薬
かへす利を得れは。何としてもかへす。かゆると