翻刻
弟子(でし)は初から吟味し。小/僧(ぞう)から中年迄は。諸宗の出(しゆつ)家
衆(しう)のごとく医道(いどう)の法問(ほうもん)にて。高下を吟味し。もはや
療治させても。くるしかるまじきと。思ふ程を見付
てゆるしを出て療治させばよかるべし。然に大/成(せい)
論(ろん)の文字よみも。するかせぬかにて。はやりやうぢ
してまぐれあたりを鼻(はな)にあて。上手ぶりをして
は。いかで上手が出来候はんや。又/福(ふく)右衛門問ふ。医道
に正(しやう)法と邪/法(ほう)と候や。木斎/答(こたへ)て正邪なくて不_レ叶
事也その正法と云は。すへの見へぬ。あやうきひたる
事をせず。薬にも上薬をつかひ我心に省(かへり)見て
も精/力(りき)一つはいに。療治するを云べし。邪法といふは
病人の。すへはともかくもあれ。腹(はら)一はいに。薬のつよ
き療治して。剰(あまつさへ)薬に念をも不_レ入。病人をも
みくしやにして。人にわたすなどを云べし。されば
病人にまなこを付て療治すると。我利/慾(よく)と
名/聞(もん)にばかり。眼(まなこ)を付て。りやうぢするとのわけ也
いづれもよくいたしたしとなれ共眼の付様にて
人の害(がい)に成が有べし。病人は的(まと)のごとし。大的も小
的も有べし。的の大小は。誰(だれ)も見わけべけれ共病
人は見にくし。人目に軽(かろ)く見へて。おもきか有。当
分はおもく見へ甚(はなはだ)しけれ共。なをるとなれは。愈
案(やす)きも有。いしやは射(い)手のごとし。弓と矢とは