翻刻
立て死たり。術家(しゆつけ)の名誉(めいよ)是也とて。三人共に。都鄙(とひ)に
かんし侍りけると也。然れば占方(うらかた)と。加持(かじ)と医(い)とは。は
なれざる物なれば。貴客(きかく)は加持しゐへ。われは療治(りやうじ)
すべし。いさ其心/一致(いつち)して加持(かじ)も療治もすべし
こなたへとてひとま成所へよびてせいぼくと云あはせ
木斎は木薬(きくすり)の名を書立て薬種経(やくしゆきやう)と名づけ。是
をよみていのらせゐへ。われ又是につきて了簡(りやうけん)すべし
といへば。ともかくも御はからひに。まかせ候べしとて
本尊(ほんぞん)には七仏/薬師(やくし)の絵像(ゑざう)をかけ奉り。病人を
壇(だん)上に置て。先薬師経をよみ真言(しんごん)を。おんころ〳〵
せんだりやまとうぎ。そわかと唱(とな)へければ。病人いつも
のごとく口まねせり。そのつぎに彼作意(かのさくい)の。薬種/経(きやう)を
打(うち)上て。ちんひかうぶしにつけいけいしん。にんぢんせんきう
くわつかうもつかうかんぞうさんしゝ。白だん白じゆつ
とうにんあんにん。びんらうじなどゝ。段々(たん〳〵)によみけるを。病
人口まねこと〳〵くしけれども。其内におのれがいや
なる薬をば。さらにまねざりけり。木斎そばにて
是を書とめ。その薬種(やくしゆ)どもを調合(てうがう)してのませけ
れば。病人もつての外にいやがり。逃(にげ)かくれけるを。のが
さずとらへて。無理(むり)にのませければ。次第(しだい)に快気(くはいき)し
て。半年計(はんねんばかり)に。すきとなんぶくしてんげりかるかゆへに
晴卜(せいぼく)も。宜礼式(よろしくれいしき)をうけて。ひとへにぼくさいの御かげとて