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一 聖人(せいじん)の教へは尽(こと〳〵)く養生にあらすと云事なし孝(かう)
悌忠信(ていちうしん)を以て心をやしなひ礼学謝御(れいがくしやぎよ)を以て体(たい)
を養(やしの)ふ其教へは所々あれともいつれ皆養生の
道具(どうぐ)なりとしるへし親(おや)に孝(かう)を尽(つく)し己(おのれ)より長た
る人に悌(てい)を尽(つくす)す事 只(たゞ)己かこゝろ一ぱいに実義(じつぎ)
を以て仕(つかふ)るを肝要(かんやう)とす常(つね)に父母の命あるとき
は何事も唯諾(いだく)して背かす柔和(にうわ)に交てつとむる
か平生の孝悌(かうてい)なり君(きみ)に忠義(ちうぎ)を尽すも王公大人(おうこうたいじん)
にありては義にあたるとあたらさるとの差別(さべつ)
ありてむつかしき事なりされとも平生の士(し)庶(しよ)
人にありては心やすき事なり唯(たゞ)何事(なにごと)の命(おゝせ)にも
背かす争(あらそ)はすして能(よく)つかふるときは別義(べつき)ある
べからす扨(さて)其 孝悌忠信(かうていちうしん)といふものも実意(じつい)なく
ては但 虚飾(かざりもの)となる故(ゆへ)に信(しん)にあらされは用なし
故に信の一字 孝悌忠信(かうていちうしん)の本となるとしるべし
かく心得るときは心 労(ろう)せすして自然(しぜん)の楽(たの)しみ
あるべし礼楽謝御(れいがくしやぎよ)は人に交(ましは)り身を修(おさむ)るの芸道(げいどう)
なり礼に習(ならふ)ときは起居みたりならすして身体(しんたい)
動き胃気(ゐのき)めくる飲食(いんしよく)和(くは)して身に益(ゑき)あり楽(がく)は民(かる)
間(きもの)にありてはうたひ乱舞(らんぶ)の類を楽と心得てよ