翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション2

養生録 - 翻刻

養生録 - ページ 16

ページ: 16

翻刻

一 聖人(せいじん)の教へは尽(こと〳〵)く養生にあらすと云事なし孝(かう)  悌忠信(ていちうしん)を以て心をやしなひ礼学謝御(れいがくしやぎよ)を以て体(たい)  を養(やしの)ふ其教へは所々あれともいつれ皆養生の  道具(どうぐ)なりとしるへし親(おや)に孝(かう)を尽(つく)し己(おのれ)より長た  る人に悌(てい)を尽(つくす)す事 只(たゞ)己かこゝろ一ぱいに実義(じつぎ)  を以て仕(つかふ)るを肝要(かんやう)とす常(つね)に父母の命あるとき  は何事も唯諾(いだく)して背かす柔和(にうわ)に交てつとむる  か平生の孝悌(かうてい)なり君(きみ)に忠義(ちうぎ)を尽すも王公大人(おうこうたいじん)  にありては義にあたるとあたらさるとの差別(さべつ)  ありてむつかしき事なりされとも平生の士(し)庶(しよ)  人にありては心やすき事なり唯(たゞ)何事(なにごと)の命(おゝせ)にも  背かす争(あらそ)はすして能(よく)つかふるときは別義(べつき)ある  べからす扨(さて)其 孝悌忠信(かうていちうしん)といふものも実意(じつい)なく  ては但 虚飾(かざりもの)となる故(ゆへ)に信(しん)にあらされは用なし  故に信の一字 孝悌忠信(かうていちうしん)の本となるとしるべし  かく心得るときは心 労(ろう)せすして自然(しぜん)の楽(たの)しみ  あるべし礼楽謝御(れいがくしやぎよ)は人に交(ましは)り身を修(おさむ)るの芸道(げいどう)  なり礼に習(ならふ)ときは起居みたりならすして身体(しんたい)  動き胃気(ゐのき)めくる飲食(いんしよく)和(くは)して身に益(ゑき)あり楽(がく)は民(かる)  間(きもの)にありてはうたひ乱舞(らんぶ)の類を楽と心得てよ