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くなり驕奢(おごり)のわさのみ盛(さか)んなるより朝夕物に
飽足(あきたる)事なし不足々々と思ふこゝろ積欝(せきうつ)して多
病を生するの源(みなも)となる近比世俗に癇症(かんしやう)といふ
もの流行(りうこう)せり尤 昔(むかし)の癇(かん)と云には相違(そうゐ)したれ共
俗に就て論するときは此 症(しやう)前(まへ)に論する人欲の
甚しきよりして日々(にち〳〵)夜々(や〳〵)名(な)を争(あらそ)ひ利にわしり
てひたもの己(おのれ)か分限(ぶんげん)に応(おう)せさる工夫(くふう)のみなし
て無理(むり)計なる望(のぞみ)を生し実々吾一心より此病を
なすそかし此 症(しやう)陰(いん)に発(はつ)するときは先物事次第
にくどく丁寧(ていねい)になり潔癖(けつへき)とてきれいすきをき
ひしく致し何事にもふかく恐れ小間に閉(とぢ)こも
りて人に逢(おう)事をだにいとひあるひは落涙(らくるい)して
折々 悲(かな)しみなきさしてもなき事をくりかへし
〳〵あんし思ふ事やます陽に発する時は度々
怒(いか)り人とあらそひ次第(しだい)に手あらくなり遂(つゐ)に狂(きやう)
乱(らん)するにいたる事あり是 皆(みな)養生の心得あしき
よりして如(ごとく)_レ此(かくの)なるに至(いた)る事あり彼いわゆる天
然自然の楽(たのしみ)をなし寡欲(くわよく)にして身を動(うご)かし正直(まつすぐ)
にして家業(かぎやう)をなすときは是等の病をなすの所(ゆ)
由(へん)なかるべし