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名(な)を殺狗泉(さつくせん)と云て一向(いつかう)に極熱にして近(ちか)づくべ
からさるものなり是皆(これみな)硫黄(いわう)峻烈(しゆんれつ)の勢(いきを)ひつよく
して品々(しな〴〵)の猛火(めうくわ)をあらわし怪(あや)しき事(こと)もをゝき
物(もの)ゆへに傅会(ふくわい)の説(せつ)を作(つく)りて民俗(ひと)を誑(たふら)す事(こと)をゝ
し又(また)旺泉(わうせん)と云あり冬(ふゆ)は温(あたゝ)かに夏(なつ)は冷(れい)なる温泉(おんせん)
なり又 冷熱泉(れいねつせん)といふあり同(おな)し湯坪(ゆつぼ)で冷熱(れいねつ)の分(わく)
るを云なり是(これ)は潮脈(うしをすじ)のさしたるなり各(おの〳〵)浴(よく)して
効(こう)なきにもあらねども好泉(こうせん)にはあらす
一 温泉(おんせん)所々(しよ〳〵)にありといへども先(まず)は但馬(たじま)の城崎(きのざき)の
新湯(あらゆ)を最上至極(さいじやうしこく)天下第一(てんかたいいち)の名湯(めうとう)とす新湯(あらゆ)とは
一の湯(ゆ)二の湯(ゆ)の事(こと)なり摂州(せつしう)有馬(ありま)作州(さくしう)の湯原(ゆはら)其(その)
次(つぎ)なり紀州(きしう)の本宮(ほんぐう)同しく龍神(りうじん)上野(かうつけ)の草津(くさつ)加賀(かが)
の山中(やまなか)相州(そうしう)の箱根(はこね)予州(よしう)の道後(とうご)などは皆(みな)同(おな)じ位(くらい)
の湯(ゆ)なり飛騨(ひだ)の下呂(げろ)は瘡毒(そうどく)の病(やまひ)には甚(はなはだ)よしし
かれども但馬(たじま)には及(およ)ばす摂州(せつしう)の多田(たゞ)は温泉(おんせん)に
あらず冷泉(れいせん)を酌取(くみとり)て湯(ゆ)となし浴(よく)せしむ此湯(このゆ)性(せい)
悪敷(あしく)して多(おゝ)くは瘡(かさ)をいやす勢州(せいしう)の薦野(こもの)も是(これ)と
同しく皆(みな)半冷半温(はんれいはんうん)の泉(せん)にして甚 宜(よろ)しからす決(けつ)
して浴(よく)すべからず城崎(きのさき)にても瘡湯(かさゆ)といふは大(おゝい)
にあしく瘡(かさ)を愈(いや)すを以(もつ)て瘡毒(そうどく)内攻(ないかう)して終(つゐ)に復(ふく)