← 前のページ
ページ 57 / 131
次のページ →
翻刻
も物(もの)に屈(くつ)せず闊達(くわつたつ)にしてせまらずはやく判断(はんだん)
の出来(でき)る人(ひと)を大胆(だいたん)の人(ひと)といふ此(この)ふたつとも自(じ)
在(ざい)にはたらきの出来(でき)る医(い)をゑらむべし何事(なにごと)に
ても心(こゝろ)あらくしてしまらす物事(ものごと)鹵莾(めつた)にしてじ
たらく所作(しよさ)の根気(こんき)もうすく何(なに)事も不(ゆき)_二行届(とゞかず)_一吟味(ぎんみ)
する事も甚(はなはだ)あらくして物(もの)事 不覚(ふおぼへ)なる人(ひと)を小胆(せうたん)
大心(たいしん)といふて医家(いか)においては一向(いつかう)取所(とりどころ)なき也(なり)
如是(かくのごとく)なる輩(ともがら)は捨用(すてゝもち)ひぬかよしとしるべし
一 惣(そう)じて医術(いじゆつ)は精(くは)しきを尊(たつと)ふ博学(はくがく)多才(たさい)を貴(たつと)ばず
多芸(たげい)にして俗事(ぞくじ)によくわたるを貴(たつと)ばず世家に
して強大(きやうだい)なるを貴(たつと)ばず唯々 医術(いじゆつ)のみに深切(しんせつ)に
して朝夕(てうせき)煉磨(れんま)の功(こう)を積(つみ)たるをよしとす愚(ぐ)幼少(ようせう)
より医(い)に志(こゝろざ)して思(おも)ふに天地の間(あいだ)の造物(ぞうぶつ)は皆(みな)我術(わがじゆつ)
の助けにあらざるものなし春の花秋の紅葉(もみし)風(ふう)
雨(う)陰晴(いんせい)の機変(きへん)まて皆人(みなひと)の脈状(みやくじやう)にあらはれずと
云事なく然(しかれ)は天地の象(しやう)を見て人にうつすとき
は我師(わがし)にあらざる物なし又人にまじわりては
其(その)人々(ひと〴〵)のかたち動作(たちゐ)振舞(ふるまひ)に心をとめてこれを
見るときは是(これ)又其人の全体(ぜんたい)痼疾(こしつ)の癖(くせ)且(かつ)天稟(むまれつき)の
五形(ごけい)などの事 応接(おうせつ)の間にも窺(うかゞ)ふへし唯々(ただ〳〵)道(みち)は