← 前のページ
ページ 58 / 131
次のページ →
翻刻
しはらくも離(はな)るべからすとて朝(あさ)な夕(ゆふ)なに心(こゝろ)を
とめて功(こう)を積(つむ)ときは我(わか)医術(いじゆつ)の奥妙(おうめう)を究(きわ)むへき
か兎角(とかく)我術(わかじゆつ)に力(ちから)をふかく用ひて疎(おろそ)かにせさる
医(い)を需(もと)むべし
一 凡(およ)そ医(い)を択(ゑら)ふには診脈(しんみやく)巧者(こうしや)なるを尊ふへし品(しな)
々( じな)の医事(いじ)ある中に只(たゞ)心術(しんじゆつ)にあづかるものは脈(みやく)
のみなり其他(そのた)のわざは何(いづれ)も工拙(こうせつ)の証拠(しやうこ)を取事(とること)
なし且(かつ)病(やまひ)の因(いん)を求(もとむ)る事かたし故(ゆへ)に脈(みやく)を能診(よくしん)す
るを医家(いか)の専要(せんよう)とす其病(そのやまひ)の本(もと)明(あきら)かに治療(ぢりやう)の法(はう)
備(そなは)りたるを良医(りやうい)とす診脈(しんみやく)不明(ふめい)の医(い)は必ず需(もと)む
る事なかれ
一 何(なに)の道(みち)にても心(こゝろ)明(あき)らかにみかゞされは其妙に
いたる事なし別(べつ)して医(い)は意也(ゐなり)とて先(まづ)本心(ほんしん)を明(あき)
らかに磨(みがく)べし心(こゝろ)のはせ出(いづ)るものを意(ゐ)とす故に
医術(いじゆつ)は別(べつ)して心意(しんゐ)の明悟(みやうご)を主(しゆ)として術(じゆつ)を煉(ね)ら
されは其(その)妙にいたりがたし故(ゆへ)に是(これ)を択(ゑら)ふもの
も心中(しんちう)に邪曲(わだかまり)姦佞(くたましき)をたくわへさる医(い)をたうと
みて需(もと)むべし
一 医(い)を用(もち)ゆるに大(おゝひ)に取捨(しゆしや)あるべき事なり先(まづ)外感(ぐわいかん)
の病(やまひ)傷寒(しやうかん)熱病(ねつびやう)痢病(りびやう)中暑(ちうしよ)霍乱(くわくらん)などの諸(もろ〳〵)の急卒病(きうそつびやう)