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一 酒(さけ) 気(き)を順(めぐ)らし欝(うつ)をひらき寒(かん)を温(あたゝ)め暑(しよ)を消(け)し
風湿(ふうしつ)を散(さん)じ邪悪(しやあく)を去(さ)り禽獣(きんぢう)菜蔬(さいそ)の毒(どく)を解(げ)し心(こゝろ)
を愉快(ゆくはい)にし興(けう)を催(もよほ)し人(ひと)を楽(たの)しましむる事 諸薬(しよやく)
の及ぶところにあらず古人(こじん)称(しやう)して百薬(ひやくやく)の長(ちやう)と
する事 宜(むべ)なるかな唯(たゞ)平日(へいじつ)微酔(ひすい)に飲(のみ)て過(すぎ)ざるを
肝要(かんよう)とするなり酣飲(かんいん)放恣(ほうし)にして謾(みだ)りに飲(のむ)とき
は神(しん)を損(そん)し精(せい)を亡(ほろ)し其(その)害(かひ)勝(あげ)て数(かぞふ)べからず甚(はなはだ)し
き時(とき)は其(その)天年(てんねん)を失(うしな)ふにいたる恐(おそ)るべきのいた
りなり○血分(けつぶん)を順(めぐ)らす諸薬(しよやく)の内(うち)に入て能(よく)其(その)患(うれ)
ふる所(ところ)にいたらしむる妙効(めうこう)あり○ 久瘧(きうぎやく)治(ぢ)しか
ねたる時は意(こゝろ)に任(まか)せて冷酒(れいしゆ)を随(すい)分飲(のむ)たけのま
しめて能(よく)寐入(ねいら)しめて睡中(すいちう)寒熱(かんねつ)を覚へずさめて
忘(わす)るがごとくいゆるなり是(これ)予(わか)試みたる所なり○
一切(いつさい)打撲(うちみ)に用る愛洲(あいす)を温酒(うんしゆ)にて随分(すいぶん)余計(よけい)に飲(のま)
しめて臥(ふ)さしむるときは大によし○薬酒(くすりざけ)の類(るい)
は種々(しゆ〴〵)あるものなり其(その)製(せい)する家に付て其(その)功用(こうよう)
を詳(つまひらか)にして用ゆべし
一 焼酒(せうちう) 胸膈(けうかく)を快活(くわいくわつ)にし諸(しよ)冷(れい)積(しやく)欝(うつ)結(けつ)の諸(しよ)病(ひやう)を開(ひら)
き諸(しよ)気(き)を通(つう)する事神のことし蘭薬(らんやく)製煉(せいれん)に多(おゝ)く
此を用て薬気(やくき)の猛盛(もうせい)なるを尊む事あり○膈噎(かくいつ)