翻刻
【右丁】
おゐて御国方御役人へ御渡に成る同所新橋御用達西川三四郎と云人の方へ居る
一 同六月廿五日長崎表出立道中海陸無滞七月十一日高知御城下へ帰着東堺
町松尾屋か許へ被閣於御目付方御詮義相済迄諸人応接を被禁宇佐浦組頭
雄九郎中の浜浦地下役共兼て始終相詰居九月廿八日迄に諸御用相済両浦庄
屋え被相渡十月五日中浜浦へ帰着す
斯て万次郎は先庄屋か許に連帰りて母兄弟を呼に遣すに其沙汰を聞
て在所中の者共我も〳〵と馳に来りて万次郎に怡ひを云もあり暫時の程
に庄屋か門前市をなせり其中に母は只茫然として万次郎か顔をなかめ
居けるを万次郎ゟ只今こそ帰り来れ先御機嫌にて目出たしといへは万次郎
かと飛かゝりて抱き付て暫涙にむせひけるか庄屋か前に来り何分万次郎にて
はなしと云庄屋ゟ万次郎に相違なし久しく不逢見故容貌見忘れた
るへし尤也といへは納得の体にて連立帰りしかとも一日二日過る迄は何分
夢の心持にてや信用なきやうなりしか日を経るに随ひいよ〳〵我子也と
おもひ夢の覚たる心地にて次第に歓喜限りなくそなりける
【左丁】
難船人帰朝記事
万次郎雑話
一 北アメリカ三十四州有府をタヨーカ〇と云惣名メンインキランシテイト〇
と云アメリカ〇を彼地にてメリカ〇と云小名はブレタン〇メキシコ〇テキシコ〇
抔と云所あり
一 畑開発しても年貢諸掛り物なし開き次第にて開きさへすれ
は地所夥敷あり
一 地下人諸掛り物身代に応し割付有一州々々の頭え取集る也男子は
十五歳になれは銀壱枚ツヽ懸る也此名ホツクヱきし〇と云国王へ収【?】る也
一 刑罰甚鮮し過銀を被取候事なとあり人を殺したる物は死刑なり
其外可殺か殺す間敷かと疑ふものをは所々に建札を出し日限を極めて
斯くの仕業を致せしもの可活か可殺かと衆人に知らせて入札やうのものを
させ可殺札多けれは多き方に決定す
一 寺をチョイ〇と云宗旨不分僧といふへき者も俗体也着用も替らす妻帯