翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

難船人帰朝紀事 - 翻刻

難船人帰朝紀事 - ページ 6

ページ: 6

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【右丁】   相談を加へて船をつるし上るに大浪打来りて水船に相成一同上陸して重   助五右衛門を残し置三人之者とも水を尋行くに船着の所より四五十間程行   岩の上に溜り水あり三人共いたゝきて飲残し置たる両人を連行く飲ませ久   振口を潤し渇を凌く此処ゟ巽の方十間計の所に岩穴ありて爰へ重助   五右衛門を置三人若哉人家之あらんかと見合に行くに何も見へす兎角す   る内日暮なり然るに地方に而藤九郎と呼大鳥夥敷居少も人を恐れす   近寄て三羽打殺し二羽其所に残し置一羽とり帰り皮を剥て寅右衛門試に   味ひ甚うましと云夫より伝蔵万次郎一同に給へ岩穴へ持行両人に喰せ倶に   飢を凌く其夜は五人抱合ふて夜を明す 一 同十五日朝二羽残し置たる鳥を万次郎取に行皮はかり有て肉なしその由   立帰り一同へ告置て直【?】に引返し行て五羽打殺取帰り皆々喰ふ此節船日頃波   に打上け来るを取上けて岩穴の内へ寝所を拵へ着用等を敷て寝臥す火も   なけれは彼鳥を生にて食するに能く身体に応するにや食傷の障りもなく   て露命を繋ぐ    此島廻三十六丁計山の高さ五十間計惣分しの茅生茂り樹木生せす我    浦辺にて〇シヤシヤブ〇と申木少しツヽ有之彼鳥三月頃子をかやし同末頃より 【左丁】    巣を立親鳥ともに飛去りて見えす 一 岩穴の日は巽うけにて穴の口の岩上ゟ水ホチヽヽ落る所あり其所へ水桶を   置水を溜て飲水にす在島中三ヶ月程雨降らす水に渇へ岩のしめりたる所へ   口を付けて廻りに吸ふたる抔大に迷惑難儀したることあり《割書:此節渇に堪へすして|小便をのみしこともあり》 一 三月頃島より十里計沖合に大船の通ふるを見受夜明頃物を揚けけれとも   見へさるや過し 一 四月頃かの鳥居さるやうに成り磯貝をとりて食物とす其後空ゟ鳥の飛下り   飛上りする様に遥かに見受伝蔵万次郎と咄し合て鳥の居所を尋るに山へ   登る伝蔵は道悪しとて中途より帰る万次郎ひとり登り見るに山の上には   平地ありて石の積上たる処あり不審におもひ其辺見合せけれとも人/影(かげ)も見   えす右積上たる石を取たる跡と見へて堀窪めたる所あり雨降りには水あ   りと見ゆ此所に鳥も居れは十二羽打殺して万次郎取り帰る四人のもの大に   悦ひ又替る〳〵取に行て日々食とす《割書:此已前ゟ重助帯下の持病起り始終穴の|中に平臥せり》    此島に在中日々の事とも変りたることなけれは委しく記さす 一 六月三日頃と覚へ巽の方に当りて出帆遥に見へ皆一同に其船寄り来る様にと   神仏を祈り願立す昼頃其船五里程の所へ寄かけけれとも風不宜して南西の