翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

難船人帰朝紀事 - 翻刻

難船人帰朝紀事 - ページ 7

ページ: 7

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【右丁】   方へ廻り山の埼崎へ隠れて見へすなり皆々力を落し最早此島に手死る也と   打歎く万次郎ゟ五右衛門に相談して右の船若哉南西方へ着んも知れされは   見に行んといへは五右衛門うけがわす万次郎壱人見に行拾丁計り山を廻れは白帆   二つ見へ近く体なれは大に悦ひ立帰り一同へ告置て直に行く五右衛門寅右衛門追付て   来んとも荒磯にて着場なし見合せ居るか体の処三人の人影を見請候哉船を   漕廻す様子也此時万次郎儒伴をぬき船を招く船よりも見て笠にて招く   此辺惣て海岸荒磯にて海際迄二十間も高き嶽なれは下るに難儀にて万次郎   着物を尻に敷てスサレ落る跡両人もかたのことくして浪打際迄下る其時艀碇【?】   を入艫着にせんとす万次郎着物をぬき捨游きゆかんとすれは船ゟ右着物を   頭に巻て游き来れと云仕形をしけれは其通りして游き行彼水主手を取て   引上る時に水主ゟ元船へ連れて行くと云手しなをする処に万次郎は彼か船は   なんても神様か助けに見へた【?】といふことそと思ひて船を伏し拝めは水主共大に笑ふ   其場合五右衛門游き来万次郎同船へ乗り寅右衛門は別の船へ乗て水主ゟ此外にも人   なきやといふ仕形をすれは万次郎ゟ二人陸に居れ共手足不叶と手しなにて答へ   けれは寅右衛門か乗たる船にて磯へ付け岩穴の口へ行色黒き人と白き人と弐人   伝蔵重助を抱き連来らんとするに両人大に恐れ逃けんとするを無理に連来り 【左丁】   艀に乗せて本船へ乗る船頭より菓子のこと丈■のを一寸四方程ツヽ皆へ与ふ喰ひ   見るに味至てよく万次郎今少し貰ひたしと手しなすれ共余計給へては不宜   迚不与夫より一時程ツヽ間を置て与へくれる其夜は其所にて右船漂泊す 一 翌日夜明頃船頭より万次郎に迎ひ船に乗り陸へゆけといふの仕形をす万次郎い   やんと答れは残し有乗組の着用類をとりて来れといふの手しななりけれは   彼船の水主六人艀に万次郎を乗せて取に行く本船帰るに豕を煮て一同へ   給させ此時久振にて火の懸たる物を喰ふ夫より右島を放れ北の方へ乗出し行く 一 右翌日朝端を立たる如き岩ある辺を乗廻り海上を経廻り十日程にして鯨を   見懸け艀四艘をおろし一艘六人ツヽ乗て鯨を取に行《割書:此時右水主共潮を吹く真似して|鯨を捕に行也と仕形にて教る》    本船長さ六十間余幅七間余深四五間程人数三十六人檣三本帆三十二引尤    鯨をとる節には十二引の艀長四間にて幅壱間程檣二本帆二ツ引《割書:船名チヨン|ロフラン》    船頭の名フイツセル 一 此日鯨三本捕日暮に本船漕寄せ来り本船へくゝり付追〳〵取入れる    鯨を取込には中の檣へ大なるセミを仕懸綱を通して其端へ鉤の如き物を付け    鯨の黒皮を引かけ舳に轆艫ありて捲あける内に庖丁にて切剥一方ゟ船へ    取合す也切方は首より伐はしむ舳の内に鯨を煮る程の大釜三ツ居り有