翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

難船人帰朝紀事 - 翻刻

難船人帰朝紀事 - ページ 9

ページ: 9

翻刻

【右丁】    此島は山低くして近寄ては山の姿は見へ難し少し放れて見れは檣を立    ならへたる如し樹木見ゆる椰子の木也此島人木の実を食物とす人の色    黒くして惣身へ入墨し髪はサンキリ也 一 寅二月ギウアーム〇島へ着船三十日余滞船薪水を入三月出帆日本東海又は   無人島の近辺等を乗廻り鯨を取る内月も立行とも数日を不覚    ギウアーム島は周廻三十里計山高く人の色合太体日本人のことし惣髪    ザン切家数千軒計あり家作茅葺にて瓦葺の大家一軒有是はいイシバニンノ    支配にて其国の奉行在留の役所也 一 同九月頃東の方へ乗行てウワフ国へ行しつもり積の処風悪敷して下タ手へ落され   赤道を南へ越ヱシウ島周廻二十里計〇モウイ島周廻三十里程二島共山高く人の色合    日本人のことし形容衣類インキリス〇同様家は茅葺也 一 此所にて三十日程滞船薪水を入巽の方へ乗り南アメリカの鼻を越る時廻り   四五十里もあるへき氷山を見る其辺に壱里廻りゟ五六里程もあるへき氷山   いくつも漂ひ居るを見たり其辺を乗りぬけ北の方角へ船を乗る此経廻の中   年も越へたれとも処々の会場海上走滞の月日等不覚 【左丁】 一 卯六月北アメリカの内ヌヘツソーダと云所に着船是船頭フイツセルの在所也    此湊にて三里の入江西東の流れ也右港の入江に四十間廻りの小島あり其上    に大なる石の家を作り石硝子の火袋に終夜火を燈す也入江の真中に五丁    程の島あり其島へ両方より橋をかけ往来す《割書:台は石にて|橋は板なり》北側はハヤヘフン    《割書:家数は三|千軒程》ハナヘフンの鼻に大なる家を建其中に石火矢数挺入置玉薬等入    置所も拵有    北アメリカは西の方に高山数々あり東の方は低き山計也東西の経り百二十度    《割書:日本道|三千里》北アメリカと云一州毎に庄屋のこときものありて政道を司り賞罰を    も成す也家は焼石《割書:三寸角に長六寸計に土を|焼て拵石のことくなるもの》を積重ねて壁を拵内は漆喰    にて塗二階又は三階作りも有内の壁をは様々彩りあり座敷は板敷にて    其上に草を敷《割書:草の名セウ|ルツヘイ》と云其上に羅紗を敷腰掛を置腰を居る也    食する時は方なる高さ三尺計の盤《割書:大小|アリ》に器物を上け皆々取巻喰ふ食物    は麦の粉にて菓子のことく拵へ蒸して喰ふ菜は魚鳥豕牛類油揚にもし    色々として喰ふ寝所は棚の様に拵へ布団を敷て臥す布団は羅紗或は    もめん等にて中には綿を入る也    人物は惣分色白く髪の艶よろしく油はつけたれとも至て黒し時々櫛にて