← 前のページ
ページ 26 / 100
次のページ →
翻刻
今ハのつけに祖父祖母(ぢいばゞ)がこまつたものじやしかし格別(かくべつ)
長いことハないなどゝ娘(むすめ)に親(おや)がいひ聞(きか)すやうな時節(じせつ)な
れバ是(これ)むかしと今とハ大なる違(ちが)ひなるべし
○むかしハ男ハ男らしく女は女子(をなこ)らしう。したものなれど
今ハ男の若(わか)ひ形(なり)て天窓(あたま)を綿(わた)で巻(まき)女子(をなご)か羽織(はをり)
を着(き)るやう娘(むすめ)の子(こ)に三味線(さみせん)ひかぬのもなし。女のかみ
ゆひに結(ゆわ)さぬのもなし最早(もはや)そろ〳〵と女(をんな)の髪結床(かみゆひとこ)が
出來(でき)そうなやうす也。近頃(ちかごろ)は女の懸取(かけとり)か流行(はやり)もはや
追(おゐ)つけ男がいもじをかき女がふんどしをかくやうにならふ
もしれぬ。むかしハ女の髪(かみ)を稾(わら)にてたばね。竹のかうがい
かんざしに木地(もくぢ)の櫛(くし)さしたるもの也。かづらにて髪(かみ)ゆひし
もの也と聞(きく)。油(あふら)にて結(ゆ)ふがよつほどの奢(おこり)になりしとも
聞及(きゝおよ)ふに近世(きんせい)ハ匂(にほ)ひ油元(あふらもと)ゆひ。のり引の丈永(たけなが)などハも
はや古(ふる)くなり。今はハ無流(むりう)さま〳〵のとんぼう緋鹿子(ひがのこ)の根(ね)
くゞり浅黄紫(あさぎむらさき)又/染分(そめわけ)。金糸銀糸(きんしぎんし)の根(ね)くり金銀(きん〴〵)の
丈長(たけなが)或(あるひ)は櫛(くし)かうがいかんざし。衣類(いるい)でんつぎ〴〵当世風(たうせいふう)