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○むかしハ我家来(われけらい)我子(わがこ)に物(もの)を云(いふ)に。どふしや。こふしや
と云(いふ)たものが今(いま)ハ我子や。我家来に。どふしなされ
こふしなされ。どふしておくれ。こうしておくれといふが当世(たうせい)
のことばゆへ我子(わがこ)や家来も。返事(へんし)するのにモウそろ〱
とヲゝ〱といふ返事(へんじ)をするやうになつてゐる也これむ
かしも今ハ大ひなる違(ちが)ひなり
○むかしの浄(じやう)瑠璃(るり)の文句(もんく)にハ夫(おつと)を思(おも)ふ念力(ねんりき)に石(いし)
となつたるためしもありと云(いふ)是(これ)を今の浄(じやう)るりの文句(もんく)
ていはふならバ夫(おつと)を思(おも)ふ念力(ねんりき)に蛸(たこ)になつたるためしも
ありといはねバならず三千/世界(せかい)をたづねても。夫(おつと)といふ
ハたつたひとりと云(いひ)しも今ハ。近所隣(きんじよとなり)をたづねて
も夫(おつと)といふハたつた三人といはねバうつりがわるし。
又/女心(おんなごゝろ)の一すぢに思ひつめたるといふ文句も今(いま)ハそん
律儀(りちぎ)な女は中(なか)々なし。是を当世(たうせい)の文句ていわふなら。
女ごゝろの七筋(なゝすじ)の中(なか)で直打(ねうち)が有(あり)そふな男にしやう
とまよふのも。みんなわたしがかぎゆへじやかんにんしても