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下(くだ)さんせと。ぶんやなみだにむせびけると浄瑠璃(しやうるり)をか
たらねバ今時(いまとき)の風(ふう)にハあかぬなり
○むかしハ女の胸(むね)を人に見せぬやうに半(はん)ゑりをかき
あわせたものなれども今ハ緋(ひ)ちりめんの半ゑりをわざ
とうらかへしむねから腹(はら)へおしろいし其白(そのしろ)ひ所(ところ)を見(み)
せて気(き)づかすやうにしかけまたいもじも二布(ふたの)に極(きま)つ
たものにて。元(もと)よりむさきふ不浄(ふじやう)なるものゆへ。すこし
でも人(ひと)に見(み)するハ失礼(しつれい)なりと少(すこし)も人に見せぬやうに
したものなれど今ハ人の眼(め)にたつやうに緋紋縮緬(ひもんちりめん)の
裾(いもし)を出(だ)しかけ足(あし)の白(しろ)ひ所とはいあひのよひ所を人
に見(み)せて。思ひつかすやうの分別(ふんべつ)ばかり。扨(さて)も〳〵今ハ
女の気(き)がみぢかくなつてきて。当世(たうせい)じやといひて
最早(もはや)かんじんの所(ところ)を少(すこ)し出しかけて。歩行(あるく)やうに成(なり)
しなり。物ごと世話(せわ)しなふなんでも急(きふ)な間(ま)に合(あふ)やう
に只(たゞ)はやいことをしやうくハんする時節(じせつ)なり
○むかしの娘(むすめ)の子ハ。嫁入(よめいり)するハ親(おや)しだいのものなれど