翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

当世医者風流解 3巻 - 翻刻

当世医者風流解 3巻 - ページ 57

ページ: 57

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○/至(いたつ)てむつかしき九死一生(きうしいつしやう)の大病(たいひやう)人/始(はしめ)て見るにハ。脉(みやく) 体(てい)腹(はら)手(て)足(あし)爪(つめ)惣身(そうしん)の肉(にく)まで得与(とくと)念(ねん)を入(いれ)至極(しごく)叮(てい) 嚀(ねい)に容体(やうたい)を窺(うかゝ)ふべし。眉(まゆ)を嚬(ひそめ)て只(たゝ)フウ〳〵と いひ口(くち)の内にて独云(ひとりこと)をいふて薬箱(くすりはこ)へ手(て)をかけず 顔(かほ)をしかめ小首(こくひ)をかたむけじつとして見合(みあわせ)居(ゐる)へし。其(その) 時病家ハかたすを呑(のん)で心配(しんはい)をして。下地(したぢ)の医者(いしや)の薬(くすり) を持(もち)出(いで)是(これ)御/覧(らん)なされて下されませと差(さし)いだす。これを 見(み)て少(sすこ)し首傾(くひかたむ)け。思案(しあん)も有体(ありてい)にて。下地(したぢ)の薬(くすり)を見て こほたず随分(ずいぶん)如才(ぢよさい)のない尤(もつとも)なる薬でござる。やはり先(まづ) 此薬を用(もちひ)て御らふじませといふべし。下地(したぢ)の薬(くすり)でやう なひゆへ頼(たのみ)し医者(いしや)なれば。左様(さやふ)なら下地の薬用ひま せふといはぬことハしれた事なれば。大きな場(ば)で。下地の 薬も随分(ずいぶん)無利(むり)ならぬ配剤(はいざい)なといふてばかり居(ゐ)れバ。 「下地の薬てもおもハしう御座りませず何卒(なにとぞ)あなた 様の思召(おぼしめし)にて御/調合(ちやうがふ)下されませと相願(あいねが)ふ。そふ願(ねが)ハし てからでなけれバ。若(もし)受取(うけとつ)てしくじりにならぬ為(ため)なり。