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○腫物(しやもつ)が多(おほ)き性分(しやうぶん)と見ゆれバ。是則(これすなはち)小児(せうに)の時(とき)
の胎毒(たいどく)也。大人(おとな)となりて湿気(しつけ)を催(もよへ)す也。酒(さけ)を過(すご)し
肉食(にくしよく)を好(この)み。身持不養生(みもちふやうじやう)する時ハ。何連/鼻(はな)か
陰茎(ちんほ)か落(をち)ずにハおかん程(ほと)にとんと今の内/実々(じつ〲)
養生(ようじやう)所ジヤなんどゝたらしたり又/威(をと)したりして長(なが)ふ
薬を呑(のま)し。纔(わづか)の腫物(しやもつ)気位(けくらゐ)なることを重(おも)く云(いふ)て
本真(ほんま)の湿病(しつやみ)と仕立(したて)上(あく)るが上手(じやうづ)なりと知(し)るべし
○/日々(にち〱)病人(びやうにん)を見る内/一寸(つよと)でも御/蔭(かけ)でどこかようなり
ましたとか。爰(こゝ)がよいとか御/蔭(かけ)と声(こゑ)がかゝりし時ハ先
してやつたりと思ひ安堵(あんど)すべし。夫(それ)ハよい筈(はづ)ジヤト云
会釈(ゑしやく)にて。其時(そのとき)はちと世間咄(せけんはな)し。芝居(しばゐ)ばなしなど
あしらふてもよし。まだ御/蔭(かげ)と声(こゑ)なきうちハ決(けつ)して
長尻(なかじり)長咄(なかはなし)など致(いたす)べからず。とんと御/蔭(かげ)の声(こゑ)もなく
只(たゞ)同(とう)へん〳〵とばかりの声(こゑ)多(おほ)けれハ。是/則(すなはち)断(ことはり)まへ
と悟(さと)るべし。其時(そのとき)何角(なにか)に気(き)を付(つけ)最暫(もしはら)くすれバ
全快(ぜんくわい)するといふ気取(きどり)をして逃道(にげみち)も考(かんか)へ明置(あけをく)べし