翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション2

浪華薬種問屋能書張交帖. 一 - 翻刻

浪華薬種問屋能書張交帖. 一 - ページ 5

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《割書:蘭国|醸方》補(ほ)血(けつ)大(たい)順(じゆん)酒(しゆ) 功能之略 【薬名下の文章】 万病(まんびやう)を治(ぢ)する薬(くすり)にはあらず中風(ちうぶう)血病(けつびやう)を 治(ぢ)する事(こと)第一(だいいち)の功(こう)なり血(ち)の症(しやう)より発(おこ)る 諸病(しよびやう)はこと〴〵く治(ぢ)せずといふ事(こと)なし △大順酒(たいじゆんしゆ)蘭名(らんめう)「ヒニトロピシ【」】といふ 【本文】 一 大順酒(たいじゆんしゆ)は蘭国(らんこく)雅谷貌伍乙志(こやつぷをいつ)の大奇方(だいきはう)にて実(じつ)に聖方霊酒(せいはうれいしゆ)なり其(その)効(こう)こゝに述(のべ)がたし其(その)あらましを左(さ)にしるす 血(ち)を巡(めぐ)らし気(き)を調(とゝなふ)る事(こと)誠(まこと)に玄妙(げんめう)不思議(ふしぎ)なり一切(いつさい)心気(しんき)不足(ふそく)よりおこる病症(びやうしやう)の類(るい)気病(きびやう)の類(るい)一切(いつさい)血(ち)より起(をこ)る病症(びやうしやう)の 類(るい)血(ち)不足(ふそく)血(ち)不順(ふじゆん)の症(しやう)に用て誠(まこと)に神妙(しんめう)不思議(ふしぎ)なり ▲第一之効 中風(ちうぶう)半身(はんしん)不遂(かなはず)口眼(くちめ)過斜(ゆがみ)手足(てあし)不仁(かなはず)骨節(ほねふし)疼痛(いたみ)筋脈(すじ)拘攣(ひきつける)等(とう)の症(しやう)を治(ぢ)す中風(ちうぶう)起(をこつ)て三日の内に用れば 必(かならず)十日にて全快(せんくわい)すべし誠(まこと)に壱人も治(ぢ)せざるはなし日数(ひかず)おくれたれば夫々(それ〳〵)其(その)病(やまひ)の重(をも)きかるきにより日数(ひかず)は記(しる)しがたし大抵(たいてい) 壱剤(いちざい)用ゆべし此酒壱剤は十二日用ゆる也 病(やまひ)重(おも)ければ長(なが)く用ひ軽(かる)ければ長(なが)く用ゆるに及(およ)ばず病(やまひ)の深(ふか)き浅(あさ)きによる也 薬(くすり)の効(こう)病(やまひ)に届(とゞ) くほど用ひたれば千万人(せんまんにん)に壱人も治(ぢ)せざるはなし誠(まこと)に中風(ちうぶう)を治(ぢ)する聖方(せいはう)なり軽(かる)き症(しやう)は後(をく)れたるにても必(かならず)壱剤(いちざい)にて 治(ぢ)すべし此(この)酒(さけ)を用ひて翌日(よくじつ)より必(かならず)其(その)効(こう)みゆる也 極(きわめ)て体(からだ)の内にかわる所(ところ)有(あり)てしるしを覚(をぼ)ゆる也 能(よく)ためし見るべし ▲膈症(かくしやう)・噎症(いつしやう)・翻胃(ほんゐ)を治(ぢ)する事(こと)大(おゝひ)に妙(めう)なり但(たゞ)し治(ぢし)がたき病症(びやうしやう)なるゆへ三剤(さんざい)より五剤(ござい)用ゆべし尤(もつとも)病末(びやうまつ)になりては功(こう)なし 用ゆる事なかれ噎(いつ)并に反胃(ほんい)は膈(かく)同断(どうだん)也○噎(いつ)○反胃(ほんい)○膈(かく)三症(さんしやう)とも能(よく)胸(むね)を啓(ひら)き追々(おひ〳〵)全快(ぜんくわい)に至(いた)るなり△すべて 脾胃(ひゐ)虚弱(きよじやく)の人(ひと)又(また)は心気(しんき)を多(おほ)く遣(つか)ふ人 常(つね)に大順酒(たいじゆんしゆ)を少しづゝ用ればよく脾胃(ひい)を養(やしな)ひ心気不足(しんきふそく)を補(をぎなひ)血(ち)を潤(うるほ)し 精気(せいき)を増(ます)ゆへ不足(ふそく)より起(おこ)る病(やまひ)発(おこ)らず膈(かく)噎(いつ)反胃(ほんい)などの病を患(うれ)ふ事なし腎経(じんけい)虚(きよ)して水火(すいくわ)共(とも)に不足(ふそく)し手足(てあし)ひえ小(せう) 便(べん)通(つう)じ悪(あ)しく大便(だいべん)結(けつし)咳(せき)出(いで)すでに労咳(らうがい)の症(しやう)とならんとする人もあり又(また)はうき病(やまひ)となる事もある人はみな血(ち)の災(わざはひ) なり此(この)大順酒(たいじゆんしゆ)を常(つね)に用ゆれば自然(しぜん)と腎精(じんせい)を増(まし)腑臓(ふざう)をあたゝめ養(やしな)ひ気力(きりよく)盛(さかん)になる事 世(よ)の腎薬(じんやく)の及(をよ)ぶ所(ところ)にあら ず蘭国(らんごく)の製法(せいほう)夫々(それ〳〵)薬(くすり)の油(あぶら)をとり清気(せいき)をとり其(その)真(しん)粋をとり酒(さけ)に製(せい)する也 煎薬(せんやく)は水に煎(せん)じ用るゆへ症(しやう)により てはまわりおそくきく事(こと)遠(とを)し此(この)薬(くすり)は酒(さけ)の力(ちから)にて薬気(やくき)をめぐらすゆへ格別(かくべつ)の奇効(きこう)妙験(めうげん)あるなり ▲婦人(ふじん)一切(いつさい)血症(けつしやう)を治(ぢ)する事(こと)妙(めう)なり血分(けつぶん)より発(おこ)る病(やまひ)なればいかやうなる症(しやう)にても年(とし)久(ひさ)しき難病(なんびやう)にてもかなら ず壱剤(いちざい)にてしるしあり尤(もつとも)病(やまひ)極重(ごくおも)き症(しやう)なれば二三 剤(ざい)用ゆべし○血不足(ちふそく)の人用ひて大によし且(かつ)第(だい)一に血(ち)を養(やしな)ひ 内(うち)をあたゝめ養(やしな)ふものゆへ懐妊(くわいにん)の婦人(ふじん)用ひ□【「て」ヵ】大(おゝひ)に妙(めう)也▲此薬(このくすり)用ゆる内(うち)食禁(しよくきん)あり●竹(たけ)のこ●松茸(まつたけ)●あぶらけ ●かぶら菜(な)●鳥(とり)けだもの●酢(す)●椎茸(しひたけ)●この類(るい)は薬(くすり)の後(のち)半月(はんげつ)もいみてよし           ○価定 壱舛に附 銀五拾目  壱合に附 銀五匁八分 《割書:蘭国|醸方》丁(ちやう)子(じ)酒(しゆ) 功能 価定《割書:壱舛 六匁|壱合 六分》 ▲第(だい)一 内(うち)をあたゝめ冷(ひへ)の病(やまひ)を治(ぢ)す寒疝(かんせん)冷積(れいしやく)ともに治(ぢ)す老人(らうじん)つねに用ひて手足(てあし) 暖(あたゝか)になり能(よく)血(ち)をめぐ らし気(き)を調(とゝの)ふ腹中(ふくちう)冷(ひへ)る人 常(つね)に用ひて大に吉(よし)腹痛(ふくつう)腹瀉(ふくしや)【月+写】に妙(めう)也 婦人(ふじん)一切 血(ち)より発(をこ)る諸病(しよびやう)に大によし五臓(ござう)をあたゝめ 脾胃(ひい)を補(をぎな)ひ気血(きけつ)を巡(めぐ)らすゆへに中風(ちうぶう)に用ひて大功(たいこう)有(あり)実(じつ)に仙家(せんか)の秘方(ひほう)にして平日(つねに)是(これ)を用ゆる人 自然(しぜん)と一切の病根(びやうこん)を抜(ぬき) 延齢長寿(ゑんれいちやうじゆ)せしむること誠(まこと)に稀代(きだい)の良方(りやうはう)也○婦人(ふじん)懐妊(くわいにん)の初月(はじめ)より少(すこ)しづゝ用ゆれば大に元気(げんき)をまし其子(そのこ)丈夫(じやうぶ)にして産(さん)至(いたつ) て安(やす)からしむ○予(よが)家(いゑ)の薬銘酒(やくめいしゆ)は蘭国(らんごく)の醸方(じやうほう)にして他家(たけ)に類(るい)なき製薬(せいやく)なり 《割書:蘭国|醸方》紫(し)蘇(そ)酒(しゆ) 功能 価定《割書:壱舛 五匁|壱合 五分》 ▲第(だい)一 心気(しんき)を養(やしな)ひ逆上(のぼせ)を引下(ひきさげ) 胸(むね)を開(ひら)き食(しよく)を進(すゝ)む一切 気(き)より発(をこ)る諸病(しよびやう)を治(ぢ)す痰(たん)を化(くわ)し咳(せき)を治(をさ)め能(よく)声(こへ)を出す事 妙(めう)なり鬱(うつ) 症(しやう)癇症(かんしやう)に用ひて気(き)を引立(ひきたて)即功(そくこう)を顕(あらは)す此薬酒(このくすりさけ)よく精気(せいき)を補(をぎな)ひ津液(しんゑき)をまし元気(げんき)を壮(さか)んにす故(かるがゆへ)に常(つね)に用ゆる時(とき)は心気(しんき) 丈夫(じやうぶ)になりて記臆(きおく)つよく根気(こんき)を増(ます)事 神(しん)のことし内(うち)を健(すこやか)にする故(ゆへ)に暑毒(しよあたり)寒毒(かんあたり)疫痢(はやりやまひ)等(とう)の一切 外(ほか)より入(い)るの諸悪症(しよあくしやう)を患(うれへ)ず又 平日(つねに)用ゆる人 大(おゝひ)に腎精(じんせい)をまし惣身(そうみ)に光沢(つや)を出(いだ)し肌目(きめ)を能(よく)す長(なが)く用ゆる人 寒中(かんちう)手足(てあし)こゞへず面体(めんてい)血色(けつしよく)の能(よく)なるを見て 其功能(そのこうのう)の速(すみやか)なるを知(し)るべし実(じつ)に此奇功(このきこう)の絶妙(ぜつめう)なる事 今(いま)爰(こゝ)に述(のべ)がたし用ひて知(し)り給ふべし○又 小児(せうに)疳(かん)の病(やまひ)に用ひて大によし   ○右三 種(しゆ)ともに只(たゞ)一 味(み)の製酒(せいしゆ)にあらず其(その)主(つかさ)どる物(もの)をもつて其名(そのな)とす最(もつとも)風味(ふうみ)功能(こうのう)世(よ)の銘酒(めいしゆ)と    異(こと)なるを以(もつ)て知(し)るべし○又 酒(さけ)を好(この)む人も一 度(ど)に 一合より上(うへ)は用ひず少(すこ)しづゝ度(たび)々用ひてよし 《割書:御|免》本家修合所 正誠堂 元弘所《割書:   大阪蜆橋北へ入|諸国取引所》沖田理兵衛【印】