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【右ページ】
たる別方(べつほう)をもちゆ。中暑(ちうしよ)霍乱(くわくらん)ならば此方妙なり。餘(あま)り軽(かろ)き事とあなどる
べからず。ためし多(おほ)し。小児/常(つね)に小麦藁(こむぎわら)のせんじ汁(しる)にて行水(ぎやうすい)をいたさせ臍(へそ)
を温(あたゝ)め遣し候へば。中暑霍乱入不申候。行水いたさせべきこと妙なり
一又/夏月(かげつ)暑気(しよき)にあたりたほれたる者は。水を吞(のま)すべからず熱湯(あつきゆ)に手拭(てぬぐひ)を
ひたし。臍(へそ)の下(した)をあたゝめ熱湯(あつきゆ)を取かへ〳〵暖気(あたゝまりけ)の腹(ふく)中に通るやうにすべし
一又/人家(ひといえ)なき所にて薬も持合(もちあは)さゞる時。途中(とちう)にて暑(あつさ)に中(あたり)て息絶(いきたへ)たる者
には。急(きう)に道上(みちのほとり)の熱(あつ)き土(つち)をとりて。病者の臍(へそ)の廻(まは)りを土手(とて)のやうにして
其中(そのなか)へ小便をすべし如此(かくのごとく)して内/温(あたゝま)り息出(いきいで)ば生姜(しやうが)蒜(にんにく)を求(もと)め。そのうち一色(ひといろ)
あらば噛(かみ)くだき。こまかにして。熱(あつ)き湯(ゆ)にて飲(のま)すべし
○
一/寒月(かんげつ)こゞへ死(しに)たる者は。早(はや)く灰(はい)を鍋(なべ)にて熱(あつ)く炒(いり)。きれに包(つゝ)み胸(むね)をあたゝむ
べし。灰(はい)冷(ひへ)たらば又あつき灰(はい)を取(とり)かへだんきの通るやうに温(あたゝ)むべし。息気(いきけ)
出(い)では粥(かゆ)のうはずみ。或はあたゝめ酒(ざけ)を飲(のま)すべし
○
一/麻疹(ましん)【左ルビ:はしか】には。はしかせぬ前(まへ)に身をひやさぬやうにいたし。酒(さけ)肉(にく)と房事(ぼうじ)をふかく
【左ページ】
つゝしむべし。又はらをたて短気(たんき)あらぬやうにつゝしめば。麻疹(はしか)と成(なつ)て
奇(き)妙にかろし
一又/小豆(あづき)。黒豆(くろまめ)。縁豆(えんだう)。此三品当分にいたし。少(すこ)し甘草(かんざう)を加(くは)へ。常(つね)のくすり加減(かげん)に
水を入せんじ吞(のみ)おきて。奇妙にかろし
一又/芭蕉(ばせを)の葉(は)をせんじ出し。其/湯(ゆ)にて度々(たび〳〵)湯(ゆ)あみし置(おき)て大ひに軽(かろ)し
右両様ともに麻疹(はしか)の前(まへ)になしおくべし。はしかは毒忌(どくいみ)第一の事なれば
はなはだとく断(だち)すべし。略(りやく)す。
一又/妊娠(にんしん)の婦人(ふじん)。はしか熱(ねつ)とおもはゞ。鍬(くわ)の刃(は)の古(ふる)きを。じかに腹(はら)へ当(あて)て帯(おび)を
いたし置(おき)。取替(とりかへ)〳〵熱(ねつ)をうつし取(とり)候得ば躰(たい)たもち出生(しゆつせう)の子(こ)恙(つゝが)なし
○
一/自(みづから)縊(くびれ)て懸(かゝ)つてある者は。そろ〳〵と抱(だき)をろし。和(やはら)かなる所へ仰(あをの)き臥(ふ)さす
べし。急に縄(なわ)を切て荒(あら)く落(おと)すべからずまづ胸(むね)をおさへ咽(のど)の縊(くびり)たる所
をひねり直し。手をもつて和(やはら)かに口と鼻(はな)をふさぎ。両人にて竹(たけ)の管(くだ)を
もつて両方の耳(みゝ)の中を吹(ふく)べし。壱人は其/髪(かみ)の毛(け)を手に持(もち)て引くべし。
又/別人(べつじん)を以て手と足を不絶(たへず)撫(なで)さすり。延(のべ)かゞめすべし。又/腹(はら)をおすべし。