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大臣(たいじん)を軽(かろ)んじ嫌(きら)つて是(これ)をうとんじ。偏(ひとへ)に讒人(さんにん)を信用(しんよう)するの理(り)に戻(もど)れる心(こゝろ)と
なつて邪僧遍照(じやそうへんせう)が妖悪(ようあく)あるを正直(しやうぢき)の人なりと心(しん)実に思(おも)ひまどふて。是(これ)に政(まつり)
事(こと)を与(あた)ふれば遍照(へんせう)もこれをよき時(とき)至(いた)るの幸(さいわひ)と。速(すみやか)に還俗(げんぞく)し其名(そのな)を辛(しん)
肫(とん)とあらため国(くに)の政事(せいじ)を意(こゝろ)にまかせて。遂(つひ)に一国(いつこく)の政権(せいけん)其身(そのみ)に帰(き)する
事(こと)十五六 年(ねん)の間(あいだ)なりしか。其(その)子孫(しそん)辛禑(しんぐう)辛昌(しんせう)父子(ふし)に至(いた)て高麗(かうらい)の神器(しんき)【注】
を竊(ぬす)み。王氏(わうし)の族(ぞく)こゝにつき国(くに)又(また)亡(ほろ)ぶに至(いた)るに。恭譲王(けふじやうわう)一人たま〳〵諸大将(しよだいしやう)の
おし戴(いたゞ)くにより。一たんは統(とう)を保(たも)つて暫(しばら)く其世(そのよ)をなすといへども。天命(てんめい)こゝに
絶(たゆ)べきの時節(じせつ)にやきわまりけん。日々(ひゞ)の政道(せいだう)みだりがはしく遂(つひ)に国(くに)を李成桂(りせいけい)
がために奪(うば)はれて。王氏(わうじ)の国(くに)は敗亡(はいぼう)せり。此年(このとし)大明(たいみん)の大祖(たいそ)皇帝(くわうてい)洪武(こうぶ)二十五
年(ねん)なり。同(おな)じく三十 年(ねん)にあたつて国号(こくがう)を旧(ふる)きに回(かへ)りて。再(ふたゝ)び朝鮮(てうせん)とは唱(とな)へ
【注 コマ99の9行目にこの字面で「器」の意で使用されている。】